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出版業界が不況なのは「読者を見てない」から? 読者に寄り添えば、今でもブームは生み出せる

東洋経済オンライン / 2024年3月21日 12時0分

このように、明治以降、日本における書物の流通システムと書店の変容によって、もともとは読者に近い存在であった出版社や作家が、そこから遠い存在になっていった。

結果として、作家と読み手が大きく離れてしまったことにより、出版業界にとって、読者の共感を得られやすい作品を生み出す土壌が育ちにくくなってしまったのではないだろうか。

スターツ出版・代表取締役の菊地修一氏は、その書籍作りの秘訣として、読者と作者、そして出版社が三位一体で読者の等身大に寄り添った作品作りをしていることに求めていた。

実際、スターツ出版では、自社の投稿サイトを用いて作家を発掘しており、むしろ作家自体が、その投稿サイトの読み手であったともいえる。

このように考えると、こうしたスターツ出版の仕組みは、案外、江戸時代などの出版流通の仕組みに、ある側面では近いといえるのかもしれない。読者と作者、そして売り手が渾然一体となり、それによって、読者の共感を得られやすい作品が生まれてくる――。

もちろん、これはあくまで比喩的な類似を指摘したまでだが、「本が売れない」と嘆く前に、もう一度、出版社や編集者、そして書き手が「読者」のほうを向いているのか、読者と等身大で作品を作ることができているのかを考える必要がある。

「リアル書店」という「偶然の出会いの場」

ブルーライト文芸の勃興について、筆者が思うことの2つ目が、「いま、物理書店にはどのような可能性があるのか」ということだ。

菊地修一氏は、ブルーライト文芸のような表紙がキラキラした本が書店に置かれていることで、その前で人々が立ち止まったり、それをきっかけに人々が書店に足を運ぶとインタビューで述べていた。

今回の記事を書くために、筆者は都内にあるいくつかの書店を実際に巡ってみたが、たしかにこうした青い表紙の本は書店の中でも異彩を放っているし、これが本屋への誘引力の一つになっていることは間違いない。

ここで私は、青くキラキラした表紙に惹かれて書店空間に入っていくという、一種の「偶然性」が生まれていることに興味をそそられる。

下北沢B&Bの設立に携わった嶋浩一郎は、『なぜ本屋に行くとアイデアが生まれるのか』の中で、物理書店の面白さについて「自分の興味の範囲になかったものに出会える」ことを挙げている。

ネット空間では、目的の商品まで最短距離で到達することが可能だ。検索欄に言葉を入れて、調べればすぐに目当ての商品を買うことができる。

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