父子家庭で父が倒れた高2のメイと支える人たち 大阪ミナミ「外国ルーツの少女」の成長【中編】
東洋経済オンライン / 2024年3月21日 17時0分
検査の結果は脳出血。すぐに緊急手術を受けることになった。
看護師から「お父さんに何か言葉をかけてあげて」と言われたメイだが、頭が真っ白で言葉が出ない。「がんばれ」と一言しぼり出すのがやっとだった。
夜の病院の廊下で4時間あまり、開頭手術が終わるのを待った。キムさん、ウカイさんとは、高校生活や進路の話をした。不安を紛らわせてくれているんだな、とメイは感じていた。
手術が終わり、医師に呼ばれて説明を聞いた。正三さんが一命をとりとめたことを知らされ、メイはひとまず胸をなで下ろした。
しかし、続く話から、正三さんの身体に脳出血の後遺症があることがわかった。正三さんは長期入院を余儀なくされた。
父子家庭に育ったメイには頼れる親族もおらず、1人で生活しなければならなくなる。
入院の手続きはキムさんとウカイさんが手伝った。メイは正三さんの着替えを取りに戻り、慌ただしい時間を過ごした。それが一段落すると、1人で家に帰った。
そして翌日は、1人きりで家にいた。少し落ち着いて先のことを考えると、不安で胸が押しつぶされそうだった。
「このままやと、やばい」
まず相談したのはマナミだった。メイをMinamiこども教室に誘った同級生だ。南小学校を卒業した後は別の中学、高校へと進んでいたが、互いに何でも話せる唯一無二の間柄だった。
「今、ちょっとやばいねんけど」
そう言ってメイが事情を話すと、マナミは「とりあえず、ウカイ先生の家に泊まらせてもらった方がいいんちゃう?」と提案した。
メイの頭にも思い浮かんではいたが、遠慮もあって自分からは言い出せそうになかった。どうやってお願いを切り出すか、マナミが一緒に考えてくれた。
その後、思い切ってウカイさんに電話をかけた。マナミのアドバイス通り、自宅に泊まらせてもらえないかと尋ねた。
「それやったら、うちへ泊まりにおいで」
ウカイさんは即座にそう返事をした。
彼女にもためらいはあったという。「そんなことをしてもいいのかなって。私の生活の中に『支援活動』っていうものが、それまでとは全く違うレベルで入り込んでくることになるわけですから」
「このまま島之内で暮らしたい」
ウカイさんも当然、メイの生活支援に深く関わっていくつもりだった。ただ、支援者として10年以上の経験がある彼女にとっても、子どもを自宅で長期間あずかった経験はなかった。
「支援」と「生活」の境界がなくなることへのためらいは、私のような週一のボランティアには想像もつかない。
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