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はかない別れの後、ようやくわかった夕顔の正体 「源氏物語」を角田光代の現代訳で読む・夕顔⑧

東洋経済オンライン / 2024年3月24日 16時0分

やはり彼女は頭中将が話していた女だったのだと知り、光君はますます女を不憫に思う。

逝ってしまったあの人の忘れ形見

「幼子を行方知れずにしてしまったと、前に頭中将が嘆いていたが、彼女にはそういう子がいたのか」と光君は訊いた。

「さようでございます。一昨年の春にお生まれになりました。女の子で、とてもかわいらしゅうございます」と言う右近に、

「どこにいるんだい。だれにも知られずに私のところへ連れてきてくれないか。あんなに呆気(あっけ)なく逝ってしまったあの人の忘れ形見だと思えば、少しはなぐさめられるよ」光君は言う。「頭中将にも知らせるべきだろうが、そうしたところであの人を死なせてしまった私が恨まれるだけだろう。父である頭中将とは親族だし、母の女君とは恋人だった私が、その子を引き取ってもなんの問題もないだろう。そのいっしょにいるという乳母に、私のところだとは知られずに、うまく言い繕って連れてきておくれ」

「それならばわたくしは本当にうれしく存じます。あのごたついた西の京でお育ちになるのはお気の毒だと思っておりました。五条ではちゃんとお世話する人がいないというので、あちらにいらしたのです」と、右近も同意する。

次の話を読む:光源氏の内に混在する「亡き人への情」と「浮気心」(3月31日14時配信予定)

*小見出しなどはWeb掲載のために加えたものです

角田 光代:小説家

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