伊達政宗、死を覚悟して「あざとかわいい」驚愕行動 直木賞作家が推理、豊臣秀吉との知られざる関係
東洋経済オンライン / 2024年3月24日 11時0分
政宗は頭の中で、「北条の本拠である小田原城は天下の堅城なので、もしかしたら北条が粘ってくれるかもしれない」という微かな希望というか願望を抱いていたかもしれません。
一方で、政宗は前田利家や浅野長政ら秀吉の側近とも音信を交わしていたので、楽観的な見通しが通用しないこともある程度は察していました。そしてついに、政宗は秀吉がいる小田原への参陣を決意します。
白装束姿で小田原に参陣した理由
天正18年(1590)5月、政宗は片倉小十郎景綱ら少数の供を連れて出立し、小田原に向かいました。いざというときの備えとして、本国には戦上手の伊達成実を残しました。そして、要請より遅れて小田原に参陣した政宗は、死を覚悟した白装束姿で秀吉と面会します。
大名間の私的な領土争いを禁じる惣無事令(そうぶじれい)が出た後に会津の蘆名を滅ぼした政宗は、その場で改易や切腹を命じられてもおかしくない立場にありました。
一方で、政宗は事前に秀吉の性格や好みを研究して、派手なパフォーマンスが好きなことを把握していたと思われます。そこで、自分が秀吉に臣従するという意味合いを対外的に最も効果的に見せるために、白装束姿で現れたのではないでしょうか。
秀吉はこの政宗のパフォーマンスをどう感じたのか。
巷間、秀吉は喜んだとも伝えられていますが、秀吉は内心「ややあざといな」と受け止めたのではないかと思います。
ただ、決して悪い気はしなかったのでしょう。政宗は会津四郡・岩瀬郡・安積郡の没収にとどまり、取り潰しは免れました。奥州を統治する上で、政宗が必要であると冷静に判断されたとも読めます。
一方で、葛西氏や大崎氏といった奥州の大名は改易され、最上氏や相馬氏は所領を安堵されました。
歴史のif(もしかしたら)として、「政宗がもう少し早く生まれていたら、天下を統一できていたか」という話が出てくることがあります。しかし、政宗が仮に20年早く生まれていたとしても、上洛の途上には信玄や謙信、信長など「戦国オールスター」がいたので、おそらく天下に覇を唱えることは厳しかったのではないでしょうか。
自らが招いた再びの窮地
若い頃の政宗は、ある種「俺は他の連中とは違う。将来ビッグになる」というような全能感を丸出しにした青年に近いイメージを醸し出しています。しかし、秀吉というとてつもなく巨大な存在を前にして、ヤンチャな面が徐々に削ぎ落とされ成熟していきます。
政宗の「大人としての振るまい」は、小田原参陣の際に早くも表れています。小田原に到着した政宗は前田利家や浅野長政などから詰問を受けましたが、その際に、千利休から茶道の教授を受ける斡旋を依頼しています。これを聞いた秀吉は、「田舎育ちに似ぬ奇特さと、危機の最中にそのような申し出をするとは」と、政宗の器量を褒めたそうです。
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