伊達政宗、死を覚悟して「あざとかわいい」驚愕行動 直木賞作家が推理、豊臣秀吉との知られざる関係
東洋経済オンライン / 2024年3月24日 11時0分
北条氏滅亡後の奥州仕置では先導を務め、秀吉の接待もしています。とはいえ、当時まだ20代半ばだった政宗のヤンチャの虫が、完全に収まったわけではありません。天正19年(1591)、改易された葛西氏と大崎氏の旧臣が一揆を起こし、政宗は新たに会津の領主となった蒲生氏郷とともに鎮圧にあたります。ところが、一揆を裏で煽動していたのが政宗であることが露見し、政宗は弁明のために上洛します。
このとき、政宗は白装束に加えて、金箔を貼った磔柱(十字架)を担いで参上したといわれています。今回はさすがに許されないかと思われましたが、秀吉は政宗の命を奪うことはありませんでした。その代わりに米沢から旧葛西・大崎領への転封を命じ、石高も72万石から58万石に減らされました。新たに岩出山城を拠城とし、一揆で荒廃した新領の統治に追われることになったのです。
政宗は一揆を「煽動していない」と弁明しましたが、私はやっていたと推測します。秀吉に隠れてそのようなことをしたら、それを理由に潰されるのは目に見えており、家康など歴戦の武将はそのような行為を絶対やらないのですが、政宗はまだ「これぐらい大丈夫だろう」という詰めの甘さがあって、やってしまったのではないでしょうか。
中央では許されない行為だった
中央には中央、奥州には奥州のやり方があって、政宗は奥州のやり方で一揆を煽動しました。秀吉に歯向かうとか、そういう意識でやったわけではなく、小石を投げるような感覚でやったのだと思います。
奥州ならどこかのタイミングで幕を引いて終わるところですが、中央では許されない行為でした。
まだ中央の世界をよく知らないこともありましたが、政宗には旧蘆名領を召し上げられたことに対する不満が燻(くすぶ)っていたのでしょう。「少しでも領地を拡げたい」という欲から一揆を煽動したと考えられますが、損切りできない政宗の若さが招いた失敗でした。
数々の修羅場をくぐり抜けた秀吉にとって、親子ほど年が離れた政宗は、そこまで脅威には感じなかったのかもしれません。あるいは、この頃の秀吉は朝鮮出兵を間近に控えていたので、政宗を改易するのは得策でないと考えていた可能性もあります。
いずれにせよ、政宗は再び窮地を脱しました。
政宗は秀吉の動向に振り回されましたが、二人の関係性は決して悪くなかったと思われます。むしろお互いに気質的に似た面もあり、心情的にも通い合うものがあったように感じます。
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