アップル「EV開発から撤退」の意味と、次なる探索 「iPhoneと車との連携強化」は新たな段階に入る
東洋経済オンライン / 2024年3月25日 7時10分
アップルが、電気自動車(EV)の開発から撤退するとのニュースが流れた。EVの成長鈍化が伝えられ、世界の主要市場であるアメリカの自動車市場でもシェアが伸び悩んでいる中での巨大テック企業のEV撤退は、モビリティの電動化移行に冷や水を浴びせるインパクトがあった。
本稿では、アップルのEV開発の経緯と、中止の理由、その先に訪れるアップルの将来について、考えていこう。
iPhoneの次を求める「探索」としてのEV
「iPhoneの次」となるビジネスを探すことが急務だった……。アップルのEV開発への参入には、そんな「探索」のような意味合いを見ることができる。
アップルは2007年に携帯電話市場に参入し、「Apple Computer」という社名から「Computer」を取り除いた。コンピューターだけの会社ではない、という意思表示を、共同創業者のスティーブ・ジョブズが示したわけだ。
その後アップルは、2010年に「タブレット」という新しいPCのカテゴリーを定義するiPad、2015年にiPhoneと組み合わせて使うスマートウォッチ「Apple Watch」をリリースし、いずれも業界トップのシェアを確保するに至った。しかし、iPhoneのようなアップルのビジネス変革を担うほどのインパクトがある製品ではない。
そこでアップルは、Mac、iPod、iPhoneの「次」の可能性を探索したのだ。
ここで単純な試算をしてみよう。アップルの主力製品であるiPhoneは、400ドルからという価格レンジだ。これに対して、EV専業メーカーで唯一利益を上げているテスラのEVの価格は、4万ドルから。
現在iPhoneを年間2億台販売して得られる収益を、200万台で得られる計算になる。現在の世界の乗用車出荷台数は7530万台を基に考えると、シェア2.6%でiPhoneと同等のビジネスに成長することになる。
新規参入する市場として有望であるとの判断があったことは間違いないだろう。
なぜアップルはEV開発をやめたのか?
Bloombergによると、複数あったアップルのEVのプロトタイプの1つは、かつてヒッピー文化で象徴的だったフォルクスワーゲンのバン(Type 2)をイメージした車体だったという。
アップルは、完全な自動運転(レベル5)を実現する電気自動車の製造を目論み、年間10億ドル(約1500億円)を投資してきた。その過程で、テスラやメルセデス・ベンツ、BMWといった自動車メーカーから人材を雇い入れ、160万キロを超える試験走行にも取り組んできたという(ブルームバーグ)。
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