アップル「EV開発から撤退」の意味と、次なる探索 「iPhoneと車との連携強化」は新たな段階に入る
東洋経済オンライン / 2024年3月25日 7時10分
しかしアップルはEV開発を中止した。その理由は、
1. 利益率の低さ
2. 優位性の欠如
3. 次世代CarPlayという解決策
の3つが考えられる。
まず1つ目の利益率の低さについて。現在のアップルの利益率は、直近の2024年第1四半期(2023年10〜12月)で、なんと45.9%を記録し、昨年までのターゲットだった35〜38%に比べて大幅に上昇している。
その要因はiPhoneの中でも価格が高いProモデルが好調だったこと、67%の利益率を誇るサービス部門の売上比率が上昇したことが原因だ。
これに対して、EVメーカーの利益率は振るわない。利益を出しているアメリカのメーカーはテスラだけで、利益率は18.2%。リビアンの利益率は−45.8%、ルシッドは−225.2%というのが現状だ。
加えて、アップルには、すでに携帯電話、コンピューター、タブレット、ウェアラブル、サービスといった確固たるビジネス部門があり、クルマだけに集中できる環境ではない。その点で、EV事業をリードする人材が不足していたと言えるかもしれないが、これは異業種参入の難しさだろう。
アップルはテスラに追いつけなかった
特に重要だったと思われる要因は、アップルらしさを発揮するチャンスがなかったことではないだろうか。
簡単に言うと、アップルが自動車を完全に再発明し、人々の行動変容を起こす未来像が描けなかったということだ。
現在のEVの核となる価値は、バッテリーと充電ネットワーク、制御ソフトウェア、自動運転機能の3つだ。そこに、アップルの強みである情報通信やエンターテインメントはなく、前述の3つにアップルが優位性を発揮できる領域はなかった。
2022年モデルのテスラ・モデル3を日々運転していても、実感するところだ。
例えば東京から冬の苗場のおよそ200km往復では、95%で出発し、往復の道中、高崎で5分充電するだけで、15%のバッテリーを残して帰宅できた。雪道での修正は素早く、少し姿勢を崩しても破綻しない制御の優秀さに驚かされた。アップルカーが出るまでもなく、iPhoneとの連携は完璧だった。
iPhoneがテスラのカギとリモコンとなり、乗り込む前にエアコンとバッテリーを暖めておくことができる。iPhoneを持って近づけばカギが開き、iPhoneのカレンダーに登録されているホテルのチェックイン予定から、乗り込んだときに自動的にナビをセットしてくれる。
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