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モスクワテロ、ロシアが疑っている「本当の犯人」 アメリカは「犯人はIS」としているが本当か

東洋経済オンライン / 2024年3月25日 14時0分

また、ロシアは中東において、イランやシリア、エジプト、イスラエルとも良好な関係を築いており、アメリカのように中東各地で敵視されているというわけではない。つまり、ロシアを標的にしたところで、アメリカを標的にした9.11の同時多発テロのような象徴的な意味を持つわけではなさそうだ。

確かに、ロシアには国内にテロリズムとの戦いという大きな課題がある。チェチェンをはじめとするイスラム過激派との戦いがそれだ。

1990年代後半から2000年代にかけて、プーチン大統領はチェチェン内戦を主導していた。前述の2010年モスクワ地下鉄爆破テロ以前にも、2002年モスクワ劇場占拠事件、2004年ベスラン学校占拠事件といった大規模なテロを経験し、多大な民間人犠牲者を出しているのだ。

だが、今回の事件はロシアのイスラム過激派との関係については何も情報がない。政治的な声明もなく、拘束された容疑者も金目的にやったと自供しており、チェチェンやISといった過激派の行動パターンとは大きく異なっている。犯人がISやチェチェン独立派であれば、金目的のケチな犯罪者を雇って実行するだろうか。犯行声明自体の信憑性が疑われる理由である。

ロシアはウクライナ関係者の犯行を疑っている

事実、ロシア政府はアマーク通信で流された犯行声明について何も言及しておらず、犯行声明自体に信をおいていないようだ。ロシアはむしろ、ウクライナ関係者の関与を疑っている。

例えば、メドヴェージェフ安全保障会議副議長は、「もしこれがキエフ政権のテロリストだとしたら、国の要人であったとしても見つけ出して抹消する。死には死を持って償わせる」と強い調子で述べている。

一方、ウクライナのポドリャク大統領補佐官は、ウクライナの関与を即座に否定している。それどころか、この事件がロシアによって、戦争のプロパガンダの強化、軍国主義化の加速、動員の拡大、そして最終的には戦争の開始の正当化に使われることは疑う余地がないとまで述べている。

ウクライナ側は、今回のテロリズムがウクライナに結び付けられて、報復の口実とされ、最悪の場合は開戦理由とされることを恐れているのである。これこそが、ロシアによる自作自演説が生まれる理由ともなっている。

それはともかく、ウクライナにとって最悪なのは、ウクライナ政府の正式な指示とは無関係に、ウクライナ側の何らかの勢力がテロリズムに関与しているという事態だ。

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