モスクワテロ、ロシアが疑っている「本当の犯人」 アメリカは「犯人はIS」としているが本当か
東洋経済オンライン / 2024年3月25日 14時0分
例えば、2022年9月に起きたロシアとドイツをつなぐ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム」の爆破事件の際、実行犯についてはロシア自作自演説など諸説が流されたが、昨年11月、実はウクライナ特殊作戦軍の大佐だったという調査報道をアメリカのワシントンポストと、ドイツのシュピーゲルが報じている。
さらに、同年11月にはポーランドにミサイルが落下した事件で、ウクライナ側は即座にロシアを非難したが、実はウクライナ側のミサイルだったことが判明したこともあった。
ウクライナ関係者による犯行で困るのは…
今回のテロ事件で仮にウクライナ側関係者の関与が明るみに出れば、国際社会のウクライナに対する支持が揺らぐだろうし、何よりも、ポドリャク補佐官が言うように、ロシアが軍事作戦のレベルを強化する可能性もある。
ハマスが人質を取ったことに対してイスラエルが過剰報復をしていることをアメリカやドイツは支持しているが、万が一モスクワの銃撃テロがウクライナ側の関係者であった場合には両国はどのように反応するべきだろうか。
その意味でもアメリカにとって、テロの実行犯は決してウクライナであってはならず、ISであるほうがいいということは間違いない。そうだとすると、アメリカメディアが政府高官の話としてIS犯行説を報じているのもうなずける。
しかし、残念ながら肝心のプーチン大統領はウクライナの関与を強く疑っているようだ。プーチン大統領は23日午後、容疑者の拘束を受けて、国民向けに談話を発表した。
その中で、「テロの実行犯は拘束された。彼らは逃亡しようとしてウクライナのほうに移動していた。現時点での情報では、国境を越えるための通路がウクライナ側によって実行犯のために用意されていた」と述べ、さらに今回のテロ行為をナチスが占領地域で行った処刑のようだと述べた。
ちなみにプーチン大統領はゼレンスキー政権をナチズムだと非難している。そのうえでテロリストの背後にいるものを見つけ出すとの決意を繰り返し、テロリストの背後にウクライナの存在をほのめかしている。
犯人が本当にISだった場合
しかし、仮に犯人が本当にIS(アフガニスタンのISIS-K)だった場合には、ロシアはより複雑な対応を迫られることになる。ウクライナにおける軍事作戦を引き続き実行しながら、ISIS-Kへの報復をするとなれば大変である。
9.11に際してアメリカはアルカイダを支援したとしてタリバンに戦争を仕掛けた。しかし、現在タリバンはISIS-Kと対立関係にあるため、ロシアはむしろタリバンとの協力に踏み込むことになるのか。
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