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道民が愛する「セイコーマート」凄い物流の仕組み 脅威の積載効率8割はなぜ達成できるのか

東洋経済オンライン / 2024年3月27日 17時40分

売上数ナンバーワンはかつ丼で、他にフライドチキン、カレーライス、おにぎり、クロワッサンなどつねに約30種類揃えているという。食材は冷凍のものがほとんどで、カレーライスはセントラルキッチンで作ったものを温め直して提供する一方、カツ丼の場合は店で米を炊き、カツをあげて卵でとじたり、フライドキチンの場合は生肉に粉漬けするところから調理するなど可能な限りその場で調理しているという。

以上の特徴を踏まえたうえで、セイコーマートの物流面での取り組みを紹介したい。まず、同社は物流センターの投資として、1990年代後半から2000年代にかけて100億円を投資した。全国ではなく、道内だけでこの規模の投資をしている。それ以前から物流網はできていたが、物量拡大への対応に加えて、効率化を目的に再整備を行なった。

また同社は積載効率が約8割と、ほかに類を見ないほど高い。近年の平均が35%程度で、「4〜5割あれば上出来」と言われているのでいかに高いかわかるだろう。モノを運ぶ際、仮に行きの積載率が100%だったとしても、帰りに何も積まない場合、積載率は半分になる。8割ということは、下ろしては積んで下ろしては積んで、を繰り返さないと達成できない。

他社の場合、共同物流で往復それぞれの荷物を乗せたり、同業で同じトラックを使ったりして積載効率を上げようとしているが、セイコーマートも他業態への商品供給や大手メーカーの北海道と本州の輸送を担うなどしてこれを達成している。

積載効率8割を維持するためには、配送の無駄がないようにしなければならない。そこで、同社では1日数回配送する店舗と、1回しか配送しない店舗を地域によって分けている。また、店舗側もストックを多めに持てるように店舗面積を200平米、60坪規模を標準として、各店舗で広めのバックヤードを構えている。

配送の仕方にも工夫がある。例えば、札幌物流センターから稚内物流センターにモノを運んでそのまま戻ってきたら積載効率は5割になってしまうが、セイコーマートの場合、そのまま牛乳工場に行って牛乳を積み、別の物流センターへ運ぶ。さらに次に北見の野菜加工工場でカット野菜や漬物を積んで帰ってくる。この流れだと、ずっと積載効率8割を維持できるわけだ。

地域密着だからこそ築けたサプライチェーン

牛乳工場や野菜工場は経営上の理由から買い取ったものだ。このほかに海産物の加工工場など、自社で食品工場を23工場持っている。ここで弁当や総菜や具材を加工しているほか、他社に卸すものも製造しているわけだ。各工場を原料産地のそばに置くことによって新鮮な原料を使った商品の製造をし、スーパーに勝てる価格・鮮度で勝負したいと挑んでいる。

このように、セイコーマートは原料の調達から販売まで、サプライチェーンをすべて飲み込んでやっている。例えば経営難の工場を買収したり、過疎地域に出店したりだけでなく、価格や商品展開などトータルで地域密着を徹底しているからこそ築き上げられたものだ。同社自身、物流企業であるという自覚を持っている。小売業にとってはいかに物流を抱え込むかが今後の事業展開の肝になってくるだろう。

角井 亮一:イー・ロジット代表取締役兼チーフコンサルタント

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