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京王井の頭線、四季の花咲く沿線と「7色の電車」 桜咲く春や梅雨のアジサイ、稲穂実る秋の田園

東洋経済オンライン / 2024年3月30日 6時30分

渋谷駅を発車するとすぐ渋谷道玄坂トンネルに入る。次の神泉駅で下車すれば単線並列の馬蹄形のようなトンネルの全容が確認できる。この神泉駅も神泉トンネル内にある珍しい駅だ。このトンネルはもともと丘陵地帯を切り開いた切通しで、後に上からふたをする格好で土を盛り宅地が形成された――という話を土地の郷土史家から聞いたことがある。かつてはトンネル内のためホームが短く、5両編成のうち一部の車両の扉が開かなかったが、1997年にホームが延伸され不便は解消された。

「神泉」の名は、江戸時代の弘法大師のゆかりの僧侶がこの地に泉を発見して霊水とあがめられ湯治場としたことが由来だ。明治時代になると代々木に練兵場ができて神泉にも人が集まるようになり、湯治場から発展して今の円山の花街が形成された。いわば神泉は歓楽街としての渋谷の発祥の地でもあるのだ。

浴場はその後、公衆浴場として1972年まで営業を続けたが閉館し、神泉の泉も埋め立てられマンションとなった。弘法湯の3代目は現在神泉駅前でカフェを経営しており、渋谷区の郷土史家として地域の記録を撮影する写真家でもある。ちなみにカフェの名前は「ラ・フォンテーヌ」(泉)、近くにはかつての霊泉弘法湯の道の道標が残っている。そういった歴史的観点から、神泉駅は「関東の駅百選」に選ばれている。

神泉を発車した各停が神泉トンネルを出ると駒場東大前駅だ。東大駒場キャンパスと駅は隣接しており、目黒川の源流の1つである湧水池など自然も豊富だ。近くの駒場野公園には、湧水を水源とする「ケルネル田んぼ」があり、四季折々の田園風景と電車の写真が撮れる。まるで東北地方の里山の風景の中を走る風情で、筆者がよく訪れる写真散歩コースだ。線路際の道路には桜並木があり、春には地元の花見客らで賑わう。池ノ上駅は神泉、駒場東大地区の湧水池の上流にあたる。

梅雨時の井の頭線名物「アジサイ」

渋谷から急行で最初の停車駅、下北沢駅は小田急線との接続駅。かつては井の頭線と小田急線の駅構内がつながっていたが、小田急の地下化で2019年に改札が分離された。駅は変わったが駅前は相変わらず若者の街としてにぎわっている。新代田駅は上を幹線道路の「環七通り」が走る切通しの半地下駅。東松原駅は閑静な住宅街の駅だが、近くには梅の花で知られる羽根木公園があり、梅雨時には線路脇の斜面に咲くアジサイをホームから眺めることができ、シーズン中はライトアップされる。

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