トーナメント戦でいい?高校野球"常識"覆す挑戦 「高校3年夏で負けたら引退」は"固定観念"だ
東洋経済オンライン / 2024年3月30日 11時10分
ドミニカ共和国のサマーリーグでは、10代後半のプロ選手たちが3カ月間に72試合のリーグ戦を行う。実戦経験を重ね、8軍に当たる彼らはメジャーリーグへの昇格を目指していく。
翻って日本は「負けたら終わり」のトーナメント戦のため、実戦で成長する機会が得にくい。
勝たなければ次がないからチーム優先となり、個人が犠牲になることも求められるが、もっと自分をアピールする機会があってもいいのではないか。
阪長はそんな願いを込め、個人参加型の「リーガ・サマーキャンプ」を構想した。一般社団法人「Japan Baseball Innovation」を設立し、個人や企業から寄付を募って大会運営費に充てようとしている。
約25万円という参加料は決して安くないが、それだけの投資に見合う価値をつくり出せるか。
一定以上の競技レベル、大学側の視察、ネットワークの構築などが求められる一方、元プロの荻野忠寛(元ロッテ)と大引啓次(元オリックスなど)を招いて選手たちが自由に話を聞ける環境を整える予定だ。
好評だったコロナ禍の“例外的”な合同練習会
海外ではプロ球団や大学にアピールする「ショーケース」の機会は当たり前にあるが、日本でも4年前に“例外的”に行われたことがある。
新型コロナウイルスの感染が広がった2020年、春夏の甲子園大会が中止されたなか、日本野球機構(NPB)と日本高等学校野球連盟はプロを志望する選手を対象に甲子園と東京ドームで実戦形式を含めた合同練習会を開催したのだ。
東西でいずれも2日間開催されて計118人の高校3年生が参加し、「楽しかった」「刺激になった」と口をそろえた。
山下舜平大(現オリックス)や内星龍(現楽天)、豆田泰志(現西武)、土田龍空(現中日)らが同年のドラフト会議で指名されるなど好評だったが、残念ながら1回限りで終わった。
リーガ・サマーキャンプは個人の構想で始められる点で異なるが、多くの人を巻き込み、その価値を浸透させられるかが今後の発展にかかってくるだろう。
昨今、大谷翔平や山本由伸(ともにドジャース)など一流プロは若くしてメジャーリーグへの移籍を目指し、花巻東高校出身の佐々木麟太郎のように日本のプロを経ずにアメリカの大学に進むケースも増えてきた。
時代の価値観が大きく変わるなか、野球界にもその波は押し寄せている。
果たして受益者負担がどこまで成り立つのかという点を含め、リーガ・サマーキャンプの成否を注視したい。(敬称略)
中島 大輔:スポーツライター
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