繁華街で急増中「酒のヤマト」は2024年問題も無風 カクヤスが急回復を遂げた"逆張り戦略"の中身
東洋経済オンライン / 2024年3月30日 7時20分
酒類販売・配送を行うカクヤスグループが、都心部で急速に物流網を拡大している。力を入れるのは、都心環状七号線の内側。狭い土地を活用した業務用向け物流拠点「小型出荷倉庫」の増設を進めている。
【写真で見る】業務用の“拠点”である小型倉庫の外観。おなじみのピンクの看板はなく、一般客は買い物ができない
2020年3月末に首都圏で24拠点だった小型倉庫は、2023年12月末時点で53拠点へと倍増。目的は個人飲食店の新規開拓と、配達効率の向上だ。コロナ禍で進めてきた”逆張り戦略”が、成長を牽引している。
ピンクのリヤカーが繁華街を駆けめぐる
大勢の人が行き交う夕方の新宿西口エリア。「なんでも酒やカクヤス」の西新宿SS(サテライト・ステーション、小型出荷倉庫)は、配達のピークを迎えていた。
道幅の狭い繁華街エリアの中を、配達員が軽バンやリヤカーで軽々と配達先を回っていく。主な届け先は地域密着型の個人飲食店で、配達員は1時間で平均4軒を回る。午前10時の営業開始から22時まで対応している。
カクヤスは新宿に複数のSSや店舗を構え、特に歌舞伎町で高いエリアシェアを握る。歌舞伎町SSの配達先は飲食店からナイトクラブまで幅広く、配達も朝まで対応。生ビールや高級ワインなど、地域の個人飲食店に合わせて柔軟かつ即配で対応するのが強みだ。
歌舞伎町から近くに位置する西新宿だが、既存拠点への注文量の多さや配達距離の問題で開拓しきれていなかった。西新宿SSは昨年10月1日の稼働以降、売り上げを順調に伸ばしている。繁華街エリアのドミナント戦略を強化することで、拠点間の距離が短縮されて急な注文などへ柔軟に対応できるようになった。
カクヤスグループの佐藤順一会長は「物流網の密度はまだまだ高められる。個人経営の飲食店を中心にさらにシェア拡大を目指す」と意気込む。
従来、カクヤスは大手チェーン居酒屋を得意としてきた。毎日の大量注文に応えるため郊外に大型配送センターを構えてきたが、コロナ禍で外食産業は壊滅的な状況に陥る。
カクヤスは2021年3月期に26億円、2022年3月期は33億円の営業赤字に転落。2021年5月に伊藤忠食品や三菱食品に対し、第三者割当増資で約22億円を調達して切り抜けた。
赤字でも断行した先行投資
業績が苦しい中で行ったのが、コロナ後を見据えた先行投資だ。カクヤスは飲食店の動向を1年間観察し、宴会需要に支えられていた大型店舗をもつチェーン店よりも個人店の回復が早いだろうと判断。手薄だった個人飲食店の開拓へ舵を切った。
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