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愛知県民すら知らない「豊橋うなぎ」のこだわり 県収穫量8割以上占める「一色産うなぎ」との差

東洋経済オンライン / 2024年3月31日 13時0分

夏目さんは池上げしたばかりのうなぎを裂いて、加工主任を務める姉の牧内美奈子さんに手渡した。

「今から直売所で焼きますから、実際に食べてみてください」と、夏目さん。うなぎは大好物なので嬉しい反面、一抹の不安も。何しろ、さっきまで池で泳いでいたうなぎゆえに泥臭くなるのではないか。そんなことを考えていたら、直売店に到着した。

炭火と同じ遠赤外線効果があるうなぎ専用の焼き台で、まずは皮目からじっくりと焼いていく。カリッと香ばしく焼き上げたら、ひっくり返して身を焼いていく。したたり落ちる脂で焼き台から炎が上がる。

「まずは白焼きで食べてみてください」と、牧内さん。

おおっ、皮がパリパリで身はフワフワ! かむごとに皮と身の間にある脂があふれ出して、口の中でスッと消えていく。まるでマグロのトロのような脂の口溶けがたまらない。白焼きがうまいというのは、本物の証しである。

タレを何度も重ね塗りした蒲焼も食べさせてもらったが、気にしていた臭みはまったくないどころか、そこらのうなぎ屋で食べるよりもうまい。夢中で食べていると、直売所に夏目さんがやってきた。

「豊橋うなぎは地下水を使っているので臭みが少ないのだと思います。うなぎはきれいな水では餌を食べないので、自然に近い環境を作らなければなりません。豊橋の養鰻はうなぎの飼育に適した水を作る技術に長けていると思っています」(夏目さん)

一色産うなぎは近くを流れる矢作川の水を使っている。自然環境のまま飼育できることがメリットとなるが、泥臭さが出てしまうのは否めない。夏目さんによると、養鰻池1坪あたりのうなぎの数も重要で、豊橋うなぎは100〜150尾。養鰻が盛んな九州ではその倍にあたる200〜300尾になるという。

「うなぎが多すぎると、ストレスにもなりますし、すべてのうなぎに餌が行き渡らないこともあります。養鶏で例えると、ブロイラーと平飼いの違いくらい味に差が出ます」(夏目さん)とか。

20歳で社長に就任し、会社の立て直しに奔走

夏目商店は1967年にうなぎの卸問屋として夏目さんの祖父が創業した。現在、夏目商店は自社の養鰻池が14面と、提携養鰻場が26面の計40面でシラスと呼ばれる稚魚からうなぎを育てている。祖父の代においても今ほどの規模ではないものの、養鰻も手がけていた。

祖父が扱ううなぎの品質は良く、全国でもトップクラスとの評判を呼び、業績は右肩上がりだった。祖父の亡き後は父親が後を継いだが、夏目さんが中学1年生のときに亡くなってしまった。その後、母親が社長となったものの、毎年赤字が膨らみ続けていた。

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