4月10日韓国総選挙・現政権が勝ってもいばらの道 尹錫悦政権の命運かかる選挙戦がスタート
東洋経済オンライン / 2024年3月31日 13時0分
前国防相はオーストラリアに赴任直後、すぐにとんぼ返りで帰国し、対し任命からわずか25日でついに辞意を表明するハメになった。それは、事実上の「国民の力」代表である韓東勲・党非常対策委員長が求めた結果だとされる。
検事出身の韓東勲氏は、尹大統領から政権の初代法相に抜擢された経緯などから、大統領のアバター(分身)などと指摘されてきた。
一方で、国会答弁などで野党議員の厳しい質問に舌鋒鋭く反論したり、わかりやすく説明したりする姿勢から、早くも次期大統領にふさわしい保守論客と注目される。
その韓東勲氏が、尹大統領の判断を覆す形で前国防相を呼び返したことで、その存在感と発言力の大きさを改めて印象づけることになった。
「改めて」というのは、この騒動の前にも韓東勲氏は尹大統領と対立し、完勝した前哨戦があったためだ。それは尹大統領の夫人、金建希氏をめぐる「事件」だった。
金建希氏は夫が大統領に就任後、知り合いから高級ブランドのバッグを受け取ったとされる映像がネット上に流出。違法行為だと攻勢を強める野党に対し、尹大統領や政府は長く放置したままやり過ごしていたが、韓東勲氏は2024年1月、「国民目線に合った」対応の必要性に言及した。
総選挙が近づく中で、このままでは劣勢を強いられるとの判断からの発言とみられるが、大統領側は強い不快感を抱いた。
発言後、日本で言えば官房長官的な役割を担う大統領秘書室長が、事実上の党のトップに就いたばかりの韓東勲氏に直接会い、辞任を要求。これに対して韓東勲氏は辞任を求められた事実とともに、一蹴したことを報道陣の前で暴露した。
つきまとう「大統領夫人リスク」
大統領のアバターどころか、名実ともに与党の主導権の完全掌握を狙うかのような韓東勲氏の単独行動に、韓国メディアでは政府との対立は避けられないとの観測も流れたが、尹大統領側がそれ以上の圧力をかけるのをやめたため、事態はいったん沈静化した。
高い人気を背景にする韓東勲氏と一戦交えることになると、総選挙に惨敗し、自ら死に体化を招きかねないとの判断があったためだろう。
しかし、政治のプロではないだけでなく、互いに検事出身という政権と与党のツートップのしこりは確実に残っているとされる。総選挙で野党が再び、単独過半数をとることになれば、尹政権は手足がしばられた状態に陥るが、与党が善戦したとしても韓東勲氏が救世主として信頼を集め、現在以上に次期リーダーとして脚光を浴びることになろう。
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