「今の米国株はITバブル時に近い」は本当だろうか FRBへの株式市場の信認は簡単には崩れない
東洋経済オンライン / 2024年3月31日 21時0分
アメリカの株式市場は3月も最高値更新が続いた。代表的な指標であるS&P500種指数の年初来から3月末までの上昇率は約10%に達した。
「大幅利下げ期待後退」でも米国株が堅調なワケ
前回のコラム「金利再上昇でも米国株が最高値を更新する理由」(3月4日配信)では「米国株は短期的な調整はあっても底堅い値動きが続きうる」と述べたが、今のところ調整らしい調整もなく、昨年10月末以降上昇相場が続いている。
同国経済についても、加熱も失速もしない安定成長が続いている。企業業績の見通しは緩やかな修正にとどまっているので、年初来からの株高の多くは、バリュエーション(企業価値評価)の高まりで説明できる。12カ月先のS&P500種指数の予想PER(株価収益率)は3月下旬時点で21倍台と、コロナ禍後に株価が急騰していた2021年の水準まで上昇している。
ここまで米国株のバリュエーションを高めた要因はいくつか挙げられる。まずは、株価の押し下げ要因になりかねないインフレへの懸念が大きな材料になっていない。年初から消費者物価などインフレ指標の上振れが続いたが、それがバリュエーション調整をもたらすには至っていない。
実際には、インフレが従来予想よりも上振れていることによって、年初時点に想定されたFRB(連邦準備制度理事会)の大幅な利下げ期待はかなり後退している。ただ株式市場は、利下げ開始が数カ月遅れても、「FRBがいずれ始めるのであれば問題ない」と認識しているのだろう。むしろFRBが利下げに前のめりにならずに、落ち着いた振る舞いを示すFRBに対する信認が、年初来のバリュエーションを高める要因になっている。
5会合連続で据え置きが決定された3月18~19日のFOMC(連邦公開市場委員会)の記者会見で、ジェローム・パウエル議長は引き続き利下げを始める時期を特定する言質を与えなかった。1月分のインフレ指標の上振れについても強い警戒感を示さず、「昨年後半にみられた低インフレとあわせてみて、インフレが落ち着きつつある」との判断を強調、利下げ開始が遠のいているとの認識を示さなかった。
さらに、パウエル議長は「労働市場が強いままであっても、それが利下げの障害にはならない可能性」を示唆した。
株式市場のFRBへの信認はそう簡単には崩れない
2023年は経済成長が2%を超える高い伸びが続いたにもかかわらず、インフレ沈静化が順調に進んだことは、パズル(謎)であった。その理由として、労働供給拡大によって短期的に潜在成長率が高まった可能性をパウエル議長も指摘していたが、仮説の領域を出なかったとみられる。
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