「今の米国株はITバブル時に近い」は本当だろうか FRBへの株式市場の信認は簡単には崩れない
東洋経済オンライン / 2024年3月31日 21時0分
その後、議会予算局(CBO)から2023年から移民の数が伸びていた可能性が示された。この分析などを踏まえて「移民による労働力増加が続いており、経済成長が上振れてもインフレが抑制される状況が長引く可能性が高まっている」とのFRBの認識が強まったとみられる。
労働供給の拡大が経済成長をサポートしつつ、需給ひっ迫が和らぐのであれば、高い経済成長とインフレ抑制が続きうる。これは極めて理想的な状況であり、永遠に続くのは無理である。だが、パウエル議長や他の幹部が当面こうした状況が続きうると認識していることは、FRBの利下げ開始判断を後押しする、無視できない要因だろう。
これらを踏まえると、過熱・失速もしない経済状況が続く中で、FRBへの株式市場の信認が、崩れるシナリオは想定しづらい。また「アメリカの株式市場はバブルに近づいている」との見方も散見される中で、FRBが株高に警戒的になって不思議ではないものの、現状は株高への警戒感をあからさまにするFRB高官はほとんどみられない。経済インフレ環境が、米国株市場を押し下げる要因になる可能性は当面低い。
一方、ファンダメンタルズ(経済・インフレ・金融政策)の要因以外に、米国株高を牽引しているのは、生成AIなど技術革新への期待であり、実際関連企業の株価が大きく上昇している。技術革新に伴い、企業の利益成長が将来的に非連続的に増えるとの期待から、昨年末からPERの上昇を伴う形で、米国株全体の企業価値評価が押し上げられている。
今、株式市場では「新技術への期待が株高を引き起こした1990年代後半のIT株ブームに近いことが起きているのではないか」と意識されている。
現在起きている技術革新が、1990年代後半と同様、広範囲に経済成長に影響するかという問いに対して、筆者は現時点では根拠ある分析を示せない。
現在はITバブル初期の局面に近い?
ただ、当時の米国株市場を思い出すと、新技術への期待が金融市場にユーフォリア(陶酔感)を広げ、一部の企業については通常働く企業価値評価が機能せずに過大になり、株式市場全体が上昇することは起こりうる。
これは筆者の感覚にすぎないのだが、現在はITバブルの初期局面(1997年頃)に近く、新技術への期待が今後もさらなる企業価値評価の上昇をもたらしても不思議ではない。
一方、アメリカの企業は足元ではキャッシュを多く保有、投資の伸びは緩やかなままであり、1990年代後半と比べると企業の投資姿勢はかなり慎重なままだ。この観点から、当時のような設備投資拡大が起きる兆しは限定的なので、新たな技術革新による投資拡大が起きて、経済全体の成長まで高める可能性は高くないようにみえる。
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