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5年に1度の財政検証、次の年金改革の目玉とは? Q&Aで考える「公的年金保険の過去と未来」(下)

東洋経済オンライン / 2024年4月1日 9時0分

かつての社会保障・税の一体改革時代に協力し合っていた厚労・財務の戦略的互恵関係を崩している一因になっているようにも思える。

経済界や労働界が財務省の財宝を山分け?

年金部会で、私が「政策形成過程に焦点を当てる政治経済学という俯瞰的な観点から見れば、(財務省から)財宝を奪ってきて、(経済界や労働界)みんなで山分けしましょうというのと似た話に」と話しているように、マクロ経済スライド調整期間の一致という改革案は、基礎年金の給付水準が上がる他の方策と比較して、これが一番政治家の支援者を守ることができる話ではある。

しかし、一体改革に沿う2013年の社会保障制度改革国民会議から続く論は、「被保険者期間の延長」「1号から2号へ」などに優先順位をおいて年金改革を進めるなかで、将来の基礎年金の水準が自ずと上がるというものであり、その際、国庫負担増加分の財源確保策について速やかに検討を進めるというものであった。この角度からのほうが論のベクトルの方向性が揃っていよう。

年金部会などでは、年金局がセットする議題に沿って、マクロ経済スライド調整期間が一致しないのはおかしい、ゆえに調整期間の一致を支持するという論もでてくる。しかしながら、なぜ、国民年金と厚生年金の調整期間が不一致であれば問題があるのか。年金部会では、そうした議論もしてもらえればと思う。

ただし、調整期間の一致の必要をいう際に基礎年金の水準を上げて貧困を解決する話に触れると、先に論じたような、貧困とは無縁の論者自身の国庫負担が増えるという矛盾に衝突する。

なお、基礎年金の水準論を昔から好む「基礎年金グループ」とは異なり、私は、これまで一度も基礎年金の水準論を行ったことがない。しかし、被保険者期間の延長、適用拡大、マクロ経済スライドのフル適用という、将来の基礎年金の給付水準が上がる政策は誰よりも強く言い続けてきた。

──今後の年金制度改革のヤマ場は?

Work Longerという社会全体の上位の政策目標に照らし合わせ、社会制度全体のインセンティブ・コンパティビリティー(誘因両立性)を考えることが今は最も大切であり、その観点に立てば、高在老の廃止はかなり高い優先順位を持つことになる。

なぜ高在老の廃止が重要なのか

しかし、この改革はなかなか難しい。2018年11月の年金部会で、「これまでの在老は見直し、廃止を視野に入れた検討項目として、長い間、いろいろと会議とか報告書で触れられてきたわけで、恐らく私の読みでは5年後の年金部会でも在老をどうするかの議論をしていると思います」と発言している。

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