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システム移動で自治体悩ます「2つのコスト問題」 運用経費「3割減」うたう政府目標に疑問の声も

東洋経済オンライン / 2024年4月1日 7時11分

中国地方の町役場の担当者も、「われわれの試算では、むしろ現在よりも大幅に費用が高くなり、ランニングコストは3~4倍に膨らむ可能性がある」と嘆く。

ある大手ベンダーの関係者は「今回、政府が移行対象とする業務システムは20個で、すべてのシステムを移行せよ、というわけではない。別々の形で運用するシステムを抱えることになると、一時的に二重業務になってしまうので、逆に効率が悪くなる可能性が高い。10年後は別にせよ、少なくとも全体でみた場合は、すぐに3割も運用コストが下がるわけはない」と実情を明かす。

クラウド利用料の大口割引の効果は?

政府は「3割減」の目標達成について、初期計画(2020年)では「システムの運用経費」を「2026年度まで」と明示していた。しかし、その後のシステム標準化に向けた基本方針(2022年策定)では、対象を「標準化の対象システムの運用経費」と限定する一方、達成時期は単に「移行完了後」としている。比較対象がわかりにくいことから、数字が独り歩きしているような印象もある。

デジタル庁の幹部は「長い目で見れば、制度改正時のシステム改修コストが減り、住民向けの新サービスを作りやすくなる。将来的にコストが下がっていくのは間違いない」と強調する。

システム移行に向けた音頭を取るデジタル庁は、自治体の負担軽減に向けた取り組みを進めている。その目玉が、複数の自治体が使うクラウドの事業者とデジタル庁が一括契約することによる、利用料の「ボリュームディスカウント(大口割引)」だ。

ただ、デジタル庁によると、政府が正式に採択したガバメントクラウド事業者のうち、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)は「将来的に20%引きを目指す」との考えを示す一方で、他の3事業者は秘密保持契約を理由に効果は明らかにできないという。「公表できるよう交渉しているが、なかなか厳しいとも感じる。現状では自治体に詳細を伝えることができず、利用料を支払う段階になって初めて値段がわかることになりそうだ」(デジタル庁の担当者)。

この点、実際に利用料を支払う自治体との間で認識のずれも垣間見える。

記者が話を聞いた、関東地方の一般市の担当者は「国からクラウドの明確な利用金額や細かい試算が出るのを待っている。それまで(ガバメントクラウドの)導入の検討はしない」と語り、国が情報開示することを疑わなかった。前出のデジタル庁の担当者は「説明会で自治体に状況を説明しているが、全自治体が出席するわけではない。通知も全自治体に行っているが、100%認知されているかわからない」と漏らす。

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