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凄い発想できる人が実践「掛け合わせ」の驚く技術 回数を重ねていくことでセンスが磨かれていく

東洋経済オンライン / 2024年4月2日 16時0分

このように、インサイトと表裏一体の存在としてプロポジションがあり、プロポジションの延長線上に具体的なアイデアが広がっていくのです。

台湾のマットレブランドを日本で売るための戦略

ここまでの話を総合した事例として、私たちが取り組んだプロジェクトをひとつご紹介しましょう。

2022年、「Sleepy Tofu」という台湾の若者に人気のマットレスブランドが日本に上陸しました。台湾では感度の高いミレニアル世代を中心に爆発的にヒットしたプロダクトですが、日本にはすでに多くの新興マットレスブランドが群雄割拠しており、日本市場ではなかなか存在感を示すことができません。

他のマットレスブランドは、いずれもマットレスのスプリングやポケットコイル、スポンジの構成や配合を説明しながら「睡眠の質を高められる」「身体をしっかりホールドすることで腰痛や肩こりを軽減できる」「良質な睡眠や姿勢の改善によって日中のパフォーマンスを高めることができる」といった具合に、マットレスを通じて仕事の生産性を高めることを訴求するのが主流となっていました。

もちろん、Sleepy Tofuのマットレスも、スプリングやスポンジの配合に独自のこだわりを持っていますが、他のマットレスブランドと同じ訴求軸で戦っても、広告投資額が多く、すでに国内で広く認知されているブランドにはとうてい敵いません。

一方で、自分自身をはじめとする一般消費者がマットレスをどのようなシーンで使用しているかを考えてみると、意外なことに気がつきます。

当然マットレスは睡眠をとる時に使いますが、それだけではなく、寝転がりながらダラダラとスマホを見たり、読書をしたり、PC作業をしたり、ストレッチをしたり、映画やドラマを観たり、ちょっとお行儀が悪いですがポテチやアイスを食べたりと、実は睡眠以外のシーンで“セカンドリビング”として機能していたのです。

ベッドはただの寝る場所ではなく、寝転がった状態で過ごすための場所だった、といえるでしょう。つまり、マットレスを使う人の深層心理には「本当は布団にくるまって寝っ転がりながら生活をしたい」というインサイトが隠れていたのです。と同時に、これは、「ベッドでダラダラしながら過ごすのは自己管理ができている人間の姿ではない」という罪悪感から、なかなか意識化・言語化されづらいインサイトでもありました。

「ベッドでダラダラしても良いじゃない」

そこで、Sleepy Tofuでは、ブランドのふるさとである台湾の空気感や、豆腐をモチーフにしたユニークなネーミングが醸し出すゆるさの力を借りて、「ベッドでダラダラしても良いじゃない」というプロポジションを提案することにしました。これは、コロナ禍以降の時代の空気がまとっている、自分自身を愛してあげよう、甘やかしてあげようという「ご自愛」カルチャーにも通ずるところがあります。

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