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「東京ミドル期シングル」とはどんな人たちなのか 「地縁血縁」を嫌ってきた人たちと「孤立化」

東洋経済オンライン / 2024年4月3日 9時0分

こうして見ると、Netflixなどで目にするドラマの主人公に多い設定である。特に近年見る「ソロ活」を好むプロフィールとぴたりと当てはまっているのは、このようなライフスタイルがごくありふれた存在になっているためなのだろう。

繰り返すが、一般論としての人口論が、どちらかというと食品サンプルのような情味を欠いたものとすれば、「東京ミドル期シングル」というと十分に生きた人間の生態を取り扱っているように見えてくる。

強く認められる問題意識がそこにある。「役割のないシングル」をどのようにして社会に再び編入するかという問題である。たとえば次のような記述がある。

「将来的に家族を持たず、社会的に孤立しやすいミドル期シングルのさらなる増加は確実であり、その一部は非正規雇用による不安定な経済状況に置かれ、新たなアンダークラスを形成する可能性があります」(『東京ミドル期シングルの衝撃』98頁)

気になるところはいろいろある。特に性別である。性別に言及すること自体があまり上品でないとされる昨今だが、事実ならばやむをえない。ちょっと引用してみると、次のような感じである。

「女性は母親との交流頻度が高く遠方でも維持されています。病気や災害時などの困ったときは、親やきょうだいをあてにしています。一方、親の介護に関して女性の5割、男性の3割は自分が担うとしています」

端然として切れ味のよい分析であるが、総じていえば、女性シングルにさほど悲観しているようには見えない。というのも、女性はコミュニティとの関わりが比較的密であるためで、「親、きょうだいとの関係は女性によって維持されているのではないか」との仮説が提示されている。もちろん例外はあるだろうが、少なくとも私の周囲を見る限り、体感としてその仮説を否定する理由はなさそうだ。

男性シングルの孤立化

どちらかと言えば問題なのは、男性シングルである。たぶん東京ミドル期シングルを掘り下げるにあたって慎重な配慮を要する「急所」であったはずだ。たとえば次のような記述が見える。

「特に男性シングルの孤立化が濃厚です。家族に代わる社会関係は豊かになっていないというのが筆者の問題意識です」

孤立化--。

ついに出た。人間は何かにアイデンティティを付着させなければ生きられない。その付着させるべき対象を失ったとき、どのような恐ろしい状況が待ち構えているか、想像に余りある。しかも、真に孤立した人は自己の孤立化を否認する。

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