「エジプト」現地在住・世界史講師が語る深い魅力 一度は訪れたい「世界史的絶景の宝庫」
東洋経済オンライン / 2024年4月4日 19時0分
海外旅行は好きでよく行っていたけれど、世界史の知識は断片的でなんとなく見て終わってしまっている……という旅行者も多いと思います。このような人に向けて、世界史を「歴史的名所=人気の観光地」という切り口で解説するのは、代々木ゼミナール世界史講師で、『人生を彩る教養が身につく 旅する世界史』の著者である佐藤幸夫氏。
「歴史を知れば、『ただ見るだけ』より旅が100倍楽しめる」と主張し、今はエジプトに在住する同氏が、エジプトの絶景ポイントを歴史とともに語ります。
今から5000年くらい前に、ナイル川流域が統一されてできたエジプト王国。古王国→中王国→新王国と3000年弱続き、紀元前の時代に世界の中心をなしました。古代大河文明の一つ、ということで歴史の授業をうっすらと覚えている人もいるでしょう。そんな歴史の登場人物や遺跡を、観光地をめぐるように解説していきます。
エジプト王国の発展と衰退
古王国の時代はピラミッド時代と言われ、クフ・カフラー(スフィンクスがある)・メンカウラー王の三大ピラミッドはナイルデルタの南端のギザ地区にあります。中王国の時代は、ナイル川中流域のテーベに遷都しました。テーベの都市神アモンは、エジプトの最高神で、全知全能の神とされる太陽神ラーと結合してアモン=ラー神となり、長い間信仰されました。しかし、メソポタミアからやってきたヒクソスに、一時支配されてしまいます。
ヒクソスを追放して成立した新王国の時代に古代エジプトは絶頂期を迎え、トトメス3世の時にシリアからスーダンまでの最大版図になりました。しかし、アモン=ラーの神官団が強大化して政治に介入するのを排除するために世界初の宗教改革が行われます。アメンホテプ4世です。アトン神を唯一神とし、自らの名前を「イクナートン(アクエンアテン)」と改名、都もテーベからテル=エル=アマルナへ遷都し、権力を国王に集中させます。
しかし、急激な変革や自然災害などが相まって失敗、彼の死で再びアモン=ラーを中心とする多神教が復活しました。彼の妃がネフェルティティで、後継者になったのがツタンカーメン王です。前13世紀に登場したラムセス2世は強大な王権を復活させ、領土を拡大し、のちに「征服王」とも呼ばれました。シリア遠征でヒッタイト人と戦い、世界史上初の講和条約を結んでいます。これ以降は、衰退してしまいました。
新王国滅亡後は、オリエント世界を統一したアッシリア、アケメネス朝ペルシアの支配下に入ります。アレクサンドロス大王の没後、プトレマイオス朝が成立し、この王朝の最後の王が、あの有名なクレオパトラ7世です。彼女はローマの将軍カエサルと結婚しましたが、彼の死後はローマと対立。ローマの将軍アントニウスを味方につけましたが、前31年のアクティウムの海戦でローマ軍に敗れて自殺し、プトレマイオス朝は滅亡しました。
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