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Supreme新作を「買える人」「買えない人」本当の差 現在社会で早い者勝ちがもはや通用しない訳

東洋経済オンライン / 2024年4月4日 14時0分

こうしたわけだから、チケット転売業者は『ハミルトン』の興行主以上の利益を手にすることになる。ボットがマウスを使う人間より常に早く買い占めてしまうとしたら、早い者勝ちのルールは何の役に立つだろう。だからと言って『ハミルトン』が劇場のチケット売り場だけで販売することにしたら、今度は行列代行業者が現れてさっさと行列の先頭をとってしまうにちがいない。  

伝説的なロックシンガー、ブルース・スプリングスティーンは、ブロードウェイでソロコンサートをやることになったとき、別のアプローチを試みている。チケット販売大手のチケットマスターが発足させた「ヴェリファイド・ファン」という新たなチケット販売システムを採用したのだ。

ボットや並び屋に対抗すべく開発されたシステムで、チケット購入希望者は事前登録し、独自アルゴリズムに「熱心なファン」と認識された場合にのみ購入用URLと暗証コードが送られてくるしくみである。このシステムなら、すくなくとも一部のチケットは本物のファンに直接販売することができる。

しかしこれほどの対策を講じても、かなりの枚数が転売市場に流れたという。850ドルのチケットが転売サイトで1万ドルで売られていたら、よほどそのアーティストに夢中でない限り、払う気にはなるまい。

行列代行は「究極の資本主義」の姿

先頭を取るためにお金を払う現象は急速に増殖中だ。これをどう考えるべきだろうか。  

多くの人の目には、これはひどく不公平で非民主的な変化だと映るだろう。ある女性は2015年に裁判所の外で何日も待ったのに、同性婚を認める歴史的な裁判を傍聴できなかった。落胆した彼女は「裕福な白人の席取りのために貧乏な黒人にお金を払いましょう」というのが現在のシステムだと苦々しげに語っている。

だが別の視点から見れば、行列代行業の出現はいいことだ。貧しい人には列に並ぶ、プログラマーにはボットを書くという、それまで存在しなかった新たな雇用を創出したのだから、究極の資本主義だとも言える。  

これまでこうした問題が起きたことはなかった。だが今日では避けて通れない。早い者勝ちの原則の内部崩壊が始まったのである。

マイケル・ヘラー:コロンビア大学教授

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