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「データドリブン信者」が陥る大きな落とし穴 ミス、改ざんは日常茶飯事。信用できぬ舞台裏

東洋経済オンライン / 2024年4月5日 9時0分

その結果、発表された科学文献に含まれる誤りは、研究者にとって好ましい方向にそれやすい。従って、ラインハートとロゴフの意見に反対する経済学者が彼らの誤りに気づいたのは不思議ではない。

ラインハートとロゴフが事前にこれらの懐疑派と協力していれば、間違いに気づいたかもしれない。少なくとも、それが発表されることは防げただろう。自分に懐疑的な批評家を自分の陣地に招き入れること(科学界では「敵対的なコラボレーション」と呼ばれるプロセス)は簡単ではないが、大きな利益をもたらす可能性がある。

2012年に発表されたある論文の中で、大手ビジネススクール4校の行動科学者からなるチームが、事実や情報をより正直に報告するように促す方法を検討した。チームはアメリカの保険会社と協力し、1万3000人以上の自動車保険契約者に、車の走行距離計の数値を申告するよう依頼した。

一般的に、走行距離が多いほど事故率は高くなるため、走行距離計の数値の高さと保険料の高さは比例する。そのため、ドライバーには、前回の申告からの走行距離を過少申告して不正行為をする動機があった。各ドライバーは、「私が提供する情報が真実であることを誓います」という声明の下に署名するよう求められた。

この種の誓約は、不正防止の目的でよく用いられる。2012年以前は、アメリカの連邦所得税申告書のように、文書の最後に記載されるのが一般的だった(「偽証罪に問われることを承知のうえで……と申告します」)。

この走行距離計の調査では、ドライバーは2種類の用紙のいずれかをランダムに割り当てられた。1つは従来どおり文書の最後に、もう1つは走行距離の申告欄よりも前に、署名を必要とする誓約欄が配置されていた。

走行距離を正直に申告しないドライバー

これは、先に署名することで、申告過程において倫理的に振る舞おうという義務感が生じるとされているからだ。思ったとおり、申告よりも前に署名したドライバーは、走行距離計の値を10%ほど高く申告した。

10%というとたいした数字ではないと思うかもしれないが、ドライバーの規模が数万、数十万人になると、署名する場所を少し変えるだけで、会社が受け取る保険料が大幅に上昇することになる。これらの結果が『米国科学アカデミー紀要』に掲載されると、政府機関や民間企業は、正直な申告を増やすべくサインファーストの手法を採用し始めたが、問題があった。

この調査の走行距離データの一部が、捏造されていた。この調査は、デューク大学教授で、不正、不合理、お金に関するベストセラー書籍の著者であるダン・アリエリーが主導した。

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