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「データドリブン信者」が陥る大きな落とし穴 ミス、改ざんは日常茶飯事。信用できぬ舞台裏

東洋経済オンライン / 2024年4月5日 9時0分

調査結果の発表から9年後、行動科学者のジョー・シモンズ、レイフ・ネルソン、ウリ・サイモンソン(報復を恐れて匿名にしている別の研究グループとともに)が、このデータが本物であるはずがないことを証明した。例を挙げると、車の所有者の大半は年間2000~1万5000マイルを運転し、それ以上の距離を運転する人はほとんどいないが、このデータでは、1万マイルと申告した人と4万9000マイルと申告した人の数がほぼ同じだった。

さらに調査を進めると、シモンズらは、データに重複する行が多数あることを発見した。彼らの徹底した解明捜査により論文は撤回され、論文の著者5名全員が自分たちの研究が不正なデータに依拠していたことを認めた。

予想とは、人間にとって不可欠のものである。たいていの場合、私たちは予測なしでは何かを知覚したり、理解したりすることができない。

スマートフォンの予測変換機能が人間の言葉のよくある単語配列をモデル化して、次に入力する内容を推測するのと同じように、私たちはこれまでの経験をもとに世の中をモデル化して、近い将来起こりそうなことをより正確に予想しようとする。

原因分析と軌道修正で予測が正確になる

予測は私たちにとって物事を理解するための核となる要素であるため、それが世の中の解釈にどれほどの影響を与えているか、自覚しにくい。チェスのグランドマスターで、プロのギャンブラーでもあるジョナサン・レビットは、まず先を読み、次に予測できなかったことを反省することで、予想の精度を上げるべきだと主張している。

「チェスから学んだのは、先を見越して考え、できるかぎり先を見ようとする姿勢だ。人生では、次に何が起こるかまったくわからないまま物事を進めるよりも、何かを予想したほうがよい場合がほとんどだ。チェスは、自分の思考の限界について、多くのことを教えてくれる」

世界でもっとも優れた予測家たちは、自分の予測、つまり未来への期待を書き留めて、それを実際に起きた出来事の展開と比較するというサイクルを常に繰り返している。その過程で、失敗した予測を分析し、自身の予測能力について正直であり続けようとしている。

私たちは、みずからの知識や経験にもとづいて期待を形成し、予測を立てている。だからこそ、そうした予測がどこで間違ったかを追跡することが役に立つ。

ダニエル・シモンズ:心理学者

クリストファー・チャブリス:心理学者

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