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NHK「1000億円削減」とコンテンツ拡充の大矛盾 「6つのニュースサイト、突然閉鎖」の背景とは

東洋経済オンライン / 2024年4月5日 12時10分

現場はしっかりしているし、人材の質は高い。だが上層部がこんなに不安定で、公共メディアとして大丈夫なのだろうか。それもこれも、受信料がこの先ぐんぐん減少するのをどうするかに尽きると思う。ネットの時代になっても「テレビ放送を受信できる装置を設置したら契約する」という受信料制度を続けることに、軋みが生じてきたのだ。2027年度に収支均衡になったとしても、その先もさっきのグラフは右肩下がりが続くはずだ。また支出の大幅ダウンを繰り返すことになり、いたちごっこが延々続くだろう。

いますぐ、でなくてもいい。203X年にNHKをこうする、というグランドデザインの議論が今必要だ。NHKの内部文書によると、未来を示せという組合側の要望に、稲葉会長は「この時点で未来図を示すことが重要なことではない」と回答した。未来を示すのがトップの最大の役割だ。示せないなら会長の資格がないと自ら認めたようなものだ。

選択肢は数えるほどしかない。1つ目は、いまのまま放送に依拠した受信料制度で規模縮小を続けていく。今より限りなく小さくなって生き残るだろう。2つ目は、「スマホを持ったら受信料」は到底ありえないので、ネット受信料が納得できる形で取れるよう方向を探る。この場合、放送ほどは収入が確保できず、寄付制度も併用するべきだろう。3つ目は、税金でやっていく。この場合、政府直轄は問題があるので第三者機関を間に置くべきだと私は思う。丁寧な制度設計が必須だ。そして最後の選択肢は、何年後かにNHKをなくす。

これをいきなり決めろとは言わない。だがまず、NHKとしてどうしたいかを明確にすべきだ。そして2つくらいの選択肢に絞る。そのうえで、何らかのルールで国民として決断してもらう。私は、この問題のために特別な国民投票をやってもいいと思う。法的なハードルは横に置いておくが、「国民が選ぶ」ことが重要だ。

NHKがやるべきこと

それも見据えて、NHKが絶対にやるべきことがある。自分たちはどうあればいいか、国民と共に議論することだ。新聞協会と内輪で相談している場合ではない。国民と話し、国民同士で話してもらい、国民にどうしたいかを主張する。それくらい議論を巻き起こしていかないと、NHKはなくなるか税金運営になって与党の言いなりになるか、どちらかしかなくなるだろう。

国民と向き合い、国民の意見に耳を傾け、同時に自分たちの価値を国民に訴えかけ、どうすればいいかを国民と共に考える。そこまでやってはじめて、国民のために存在する「新しい公共メディア」として存続する可能性が出てくる。

政治家や総務省や新聞協会にしか耳を傾けないのなら、いっそなくなってもらってかまわない。それくらいの瀬戸際に差しかかっていることを、NHKが認識すべきときが来ている。

境 治:メディアコンサルタント

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