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「世界最短」国際列車消滅?シンガポール国境の今 マレーシアと結ぶ新路線建設、高速鉄道構想も

東洋経済オンライン / 2024年4月5日 6時30分

建設中の様子はコーズウェイを走る列車や車からも垣間見ることができるほか、ジョホール・バルの市街地のあちこちではRTS乗り入れに向けた工事が着々と進んでいる。国境を行き来する通勤客らにとっては、地下鉄や近郊電車のような利便性の高い交通機関の開業によって大幅な時間短縮が見込まれる。

ただ、RTSができることで「鉄道がなくなる」という犠牲も負わなければならない。

かつて、シンガポールを含めたマレー半島が英国領だった1932年、現在のシンガポール領内までの鉄道が開業。コーズウェイを渡って市内中心に近いタンジョンパガー(Tanjong Pagar)駅までつながっていたが、2011年をもって同駅までの区間は廃止され、現在は国境をわずかに越えたウッドランズにある乗降場までに短縮されてしまった。RTSの完成後は、現在のKTMによるシンガポール乗り入れが打ち切られるとの公算が高い。

ウッドランズからは、マレーシアを経てタイまで「メーターゲージ」と呼ばれる軌間1mの線路がつながっている。かつては国際列車運行も盛んだったが、列車を乗り継いでの3カ国巡りもそろそろできなくなりそうだ。貨物列車の運行はなく、シンガポール発の長距離列車も廃止されていることから、この「世界最短の国際列車」が消滅するのもやむなしかもしれない。

往年の「マレー鉄道」の栄華を今に伝承する豪華列車「イースタン&オリエンタル・エクスプレス(E&O=Eastern & Oriental Express)」もコロナ禍後に復活を果たし、ウッドランズ発クアラルンプール経由ペナン州行き特別列車として運行されているが、これもRTSの開業後はシンガポール領への乗り入れがなくなる見込みだ。

「E&O」は、欧州の豪華列車として知られるオリエント・エクスプレスの運営会社・ベルモンドが走らせている列車。編成には44室のスイートルームのほか、バー車両や展望車ラウンジがある。車内では、フレンチ・シェフが腕をふるう本格コース料理、ピアノの生演奏やサロンカーでのリフレクソロジーなどのサービスもある。

高速鉄道構想「棚上げ」のその後

RTSの建設が進む中、シンガポールとクアラルンプールの間に高速鉄道(HSR)を敷設する計画もある。時速300km以上で運行し、両都市を最短45分で結ぶ構想だ。

両都市は直線距離で約300km。双方の行き来は極めて活発ながら、今のところ陸路交通での所要時間は5時間ほどかかるうえ、途中で国境検査もあるなどあまり便利でないことから、飛行機での往来が一般的だ。両都市を結ぶ区間は世界の民間航空便の中で「最も供給座席数が多い路線」となっている。

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