単身で軍に抵抗したミャンマー元警察官の願い スーチー氏の顧問を救援、日本で難民認定
東洋経済オンライン / 2024年4月5日 8時0分
――なぜ警察官になったのですか。
本当は大学に行きたかったのですが、警察訓練学校のリクルーターが私の高校に来て、訓練学校に入るように持ち掛けました。訓練学校でも大学のための勉強はできるのでそのほうがいいというリクルーターの説得を私は受け入れました。今考えると、その説明は正しいものではありませんでした。
警察では上官が恐怖によって部下を支配し、暴力など人権侵害もたびたび目にしました。ミャンマーでは警察のイメージは非常に悪く、無実の人をつかまえて拷問することもしばしばありました。
私は警察に入った以上、その体質を変えるために力を注ぎたいと思うようになりました。タイミングよく、タイの警察士官学校に留学する機会を得られ、そこで市民社会にとってふさわしい警察官であるための心構えを勉強しました。
――タイでの留学の後は?
2016年4月には、ミャンマー政府の人身売買対策局に配属されました。当時は、アウンサンスーチー氏が率いる民主派政権が発足した直後でした。ただし、警察は依然として軍が掌握していて、改革は進みませんでした。
その後の2018~2019年にかけてオーストラリアに留学し、国際関係学の修士号を取得しました。そこでの学びから、ミャンマーでは多民族による連邦民主制がふさわしいと考えるようになりました。
外国に留学し、民主主義の重要性を学んだ私に対して、上司は不満とともに脅威を感じるようになり、昇進を阻止しようとしました。
選挙の際、アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)には投票するなと、上司は私に圧力をかけてきました。私は上司の言葉を無視して、こっそりNLDに投票しました。
民主主義を取り戻すうえでの日本への期待
――日本での生活基盤を確立するうえでの苦労は。
当初は言葉も文化も分からなかったので大変でした。今は日本での生活にだいぶ慣れました。難民認定されたことで、精神的にも安定しました。日本語の勉強にも励んでいます。
――日本を含む国際社会に望むことは。
日本を含む世界の国には3つのことを期待したい。
1つ目としてミャンマーからの難民を受け入れ、定住の場を提供してほしい。2つ目としては、民主派勢力が結成した国民統一政府(NUG)への支援を強化してほしい。そして3つ目として、残忍な軍事政権へのいかなる支援もやめてほしい。
日本はミャンマーの軍事政権に圧力を加えることができる主要な国の一つです。軍事政権にとって、円借款をはじめとする日本からの政府開発援助(ODA)がなくなると困ると思います。日本ははっきりと姿勢を示してほしい。
岡田 広行:東洋経済 解説部コラムニスト
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