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2017年の入団会見でも見せた大谷翔平の「気配り」 ファンの心をわしづかみにした「祝福の言葉」

東洋経済オンライン / 2024年4月7日 15時0分

結局、大谷は空港に現れず、入団記者会見から一夜明けた10日。午後10時前のロサンゼルス国際空港に姿を見せた。黒シャツ、淡いブルーのジャケット姿。一般客とは別に用意された通用口から入り、帰国の途に就いた。

あまりに一瞬の出来事だったため、私物のミラーレス一眼カメラでは大谷の横顔しか撮影できず、iPhoneで撮ればよかったと深く後悔した。ともあれ無事に、帰国日未定で始まった米国出張が終了した。

それにしても、なぜエンゼルスなのか。私が把握している限り、スタンドに球団スカウトを見かけたことはなく、そもそもレンジャーズのように駐日スカウトも常駐していない。

ドジャースのように高校時代から熱心にスカウト活動を続けていたわけでもない。大谷は理由について「縁」や「感覚的なもの」という言葉で表現したが、今も当時も100%腑に落ちてはいない。

12月25日。札幌ドームで「惜別会見」が開催された。栗山監督にラストボールを投げ込むセレモニーでは、サプライズでエンゼルスのユニホームを着用。無料開放された会場に集まったファンは約1万3000人。最後はスタンドからの手拍子が鳴り響き、自らの登場曲の中で退場した。

「(普段は)あんまりウルっとこないけど……。(ナインからのメッセージをまとめた)ビデオを含めて良かった」。目頭は熱くなったがこらえた。「野球だけに没頭できた5年間だった」。

大谷は人をイジるのがうまい

大谷らしく、最後まで笑顔でファンに別れを告げた。

大谷の天真らんまんな人柄は、米国でもきっと愛される。大谷は人をイジるのがうまい。2015年シーズン中の鎌ケ谷での練習日。大谷がニヤニヤしながら私に近づきこうつぶやいた。「有原さんが"最後にひとつだけ"と言ってから、たくさん質問するのはやめてほしいと言っていましたよ」。

笑いながら練習に戻る大谷にあっけにとられた。この2017年もそうだった。

ある日の西武戦後。メットライフドーム(現ベルーナドーム)の長い階段を上りながら取材していると、大谷の右足首と接触。「あー、痛い。今ので痛めた。あー、痛い」と大声。かなりオーバーなリアクションだが、開幕前に痛めた箇所だけに笑えず平謝り。それを見て大谷はいたずらっぽく笑った。

野球だけでなくこのキャラクターも、もっと伝えていきたいと感じた。

この12月に私は北海道総局から東京本社スポーツ部への再異動を拝命。日本ハム担当からMLB担当になることが正式に決まった。当時のMLB担当は、先輩記者のキャップと私の2人体制。大雪が降りしきる札幌を後にして、東京都内を拠点に新たな生活が始まった。

柳原 直之:スポーツニッポン新聞社MLB担当記者

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