「糖尿病と肥満」実は同じ一つの疾患という真実 かつて言われた「脂質は体に悪い」に根拠はなかった
東洋経済オンライン / 2024年4月7日 17時0分
そこで、標準摂取量の食品に含まれる炭水化物の量にグリセミック指数を掛け合わせて得られる「グリセミック負荷」と呼ばれる数値を使うと、グルコースの上昇度合いをうまく測ることができる。
一般的に、「糖分」と「精製された炭水化物」のグリセミック負荷は高い。「脂質」と「たんぱく質」は血糖値をあまり上げないのでグリセミック負荷はとても低い。
世界中の医療業界では低脂質の食事が推奨されているが、ウィレット博士が勧める健康的な食事は、「高脂質、高たんぱくの食事」だ。博士が勧める食事療法では糖分と精製された炭水化物は減らすが、脂質は減らさない。
1990年当時、脂質は体に悪いと考えられていて、「脂質は大量殺人者」だとか、「悪者」だとか言われていた。「体にいい脂質」などという言葉はなかった。
たとえばジャンボ・シュリンプ(大きな小エビ)などのように、矛盾した言葉だと思われていたのだ。だから、「脂質を含んだアボカドは心臓発作を起こす果物」「脂質を含んだナッツは心臓発作を起こすおつまみ」「オリーブ油は心臓発作を起こす液体」などといわれた。
ほとんどの人が、脂質が動脈を詰まらせると信じこんでいたのだが、じつはこれはたんなる思いこみにすぎない。
「天然油脂が悪い」というエビデンスはひとつもない
ケンブリッジ大学で肥満の研究をしているゾエ・ハーコムビー博士が1980年代の初頭に集められたデータを検証したところ、当時は「低脂質の食事を摂るように」という指針がアメリカでもイギリスでも出されていたことがわかった。
しかし、食品に含まれる天然油脂が心血管疾患を悪化させるという証拠は、これまでいっさいない。だから、低脂質の食事を、という指針を裏づけるエビデンスはまったくのデタラメだ。政府が脂質をよくないものとしたとき、科学的な根拠は何ひとつなかったのである。
それなのに、脂質が悪者であるという説が医学界でも一般大衆の間でも定着してしまったために、脂質ではなく精製された穀物や糖分こそが問題であると主張するのは、とんだ変わり者と思われるようになってしまった。
誰もが低脂質の食事がいいと思いこんでいたので、ウィレット博士の主張はとんでもない詐欺まがいだと思われた。だが、真実は明らかになった。
いま、私たちは肥満が2型糖尿病の主因だと知っている。
だが、太っていることだけが問題なのではない。「腹部の肥満」こそが、問題なのである。
ジェイソン・ファン:医学博士
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