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障害者を雇用すると企業の業績が伸びる理由 「慈善事業ではなく、経営戦略の一環と考える」

東洋経済オンライン / 2024年4月7日 8時30分

――障害者雇用を「社会貢献、慈善事業」と割り切る企業も少なくありません。

特に大企業でその傾向が顕著だ。社員数が多く、障害者との関係性に濃淡が生じるため、利点を感じにくいからだろう。

そもそも大企業は、健常者の中でも優秀な人を採用しており、障害者を「足手まとい」と考えがちだ。組織に溶け込ませるノウハウもない。たいていの場合、特例子会社(親会社の雇用率に加算する目的で障害者雇用に特化した子会社)を活用し、義務さえ果たせばいいや、となってしまう。

こうした現状は、すごくもったいないと感じる。大きなコストを掛けているにもかかわらず、経営戦略を立てられていない。

注意すべきは、「優秀な健常者は多様性を潰す」という事実だ。周囲に違和感を覚えてもうまく自分を合わせる。苦手なことでも「やれ」と上司に命じられれば、何とかこなす。あるいは、期待を察して嫌な仕事にも自分から取り組む。

いつの間にか、似たような思考や能力の人ばかりの集団ができる。昔はそれでもよかったが、今の時代は通用しない。海外の企業に勝てず、日本経済の成長は止まっている。

障害者はできること、できないことが明確で、周りに合わせられない。職場にダイバーシティー(多様性)を持ち込み、他者を尊重しようという雰囲気を醸成してくれる。

すると、異なる考えを持つ人間が組織内に増え、自由にアイデアを発言できるようになる。議論を深めていくと、イノベーションが生まれる。

最近は子育て中の女性が働けるとか、男性の育休取得率が高いとかで、ダイバーシティーを語る企業が多い。だが、そんなことは当たり前の話で、誇るものではない。障害者雇用こそが、成長の土壌を作り出すカギだ。

――障害者に職場で活躍してもらうためには、具体的にどうしたらいいのでしょうか。

まず必要なのは、経営的な戦略だ。現場任せでは失敗する。多くの健常者は障害者と密に接した経験がない。共に働けと言われても、最初は不安や不満も生じる。それでも、上層部が決めた方針ならやってみようと思える。

障害特性と業務のマッチングが重要

成功した企業を見ると、社長が率先して障害者を気に掛けるケースが多い。部下たちはその姿を見て安心するのだろう。ただ、規模が大きい会社では難しいので、障害者と健常者を仲立ちする、クッションのような役割の社員を現場に置くとうまくいきやすい。

そして、最も重要なのは障害特性の把握だ。身体障害者は外見で状態をつかみやすい。一方、知的や精神の障害は症状がさまざま。先入観を持たず、その人に向いている業務とマッチングさせれば、やりがいを持って働ける。健常者以上の能力を発揮する人もいて、お互いに仲間だと認め合えるようになる。

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