生徒が発案、学祭来場者「電車運賃を負担」の成果 駐車場不足がきっかけ、高知商業高校の挑戦
東洋経済オンライン / 2024年4月9日 6時30分
当初はシャトルバス運行で駐車場不足解消を考える
生徒たちは、まずブレーンストーミングによって自由に意見を出し合うことから、課題解決への模索を始めた。当初は、駐車場不足の解消については「シャトルバスの運行」が、市民への広報活動については「新聞広告」の活用が有力な案として上がった。しかし、双方ともそれぞれの課題解決にしか対応できず、その割にコストがかさむことなどから断念することになる。改めて双方の課題を同時に解決できる方法を模索することになる。
当初のブレーンストーミングでは、「新たなものを生み出す」という前提で生徒たちはアイデア出しを行ってきたが、コスト面を含めて有力な解決策を見つけることができなかったことから、「既存のものを活用する」という切り口であらためてアイデア出しを行うことにした。その結果、双方の課題解決を同時に達成するためには「マイカーの代替手段となり、かつ宣伝効果の高い移動手段となること」が必要な条件であることだとわかり、公共交通機関の活用をベースにアイデアを具体化させることにした。校舎が公共交通のアクセスが良い場所に立地していることもアイデア具体化の追い風となった。路面電車「とさでん交通」伊野線の鏡川橋電停までは徒歩で10分弱、JR土讃線の高知商業前駅までは徒歩で5分足らずの距離にある。
このうち「とさでん交通」の路面電車は、JRの駅と比較して駅数(電停数)が多く、運行頻度も高い。さらに、高知市中心部の「はりまや橋」から、市内の東西南北に路線網を広げていることから、路面電車の活用に着目。こうしたことから、路面電車であれば自動車の代替手段として駐車場不足を解消できる。さらに、車内広告や側板広告などを活用できれば、市民に対しての広報活動も同時に解決できると考えた。
そこで、生徒たちは「とさでん交通」に学習会を依頼し、路面電車の歴史や文化を学ぶ機会を設けるところから取り組みをスタート。学習会の中で生徒たちは、路面電車の利用者が減少していることや、若者の電車離れが起きていることを知り、路面電車の乗客増加にもつながるような取り組みが必要になると考えた。こうして、検討を重ねた結果、学校祭来場者の電車運賃を高校側が負担する「電車で市商祭へGO!」という取り組みが産声を上げた。
コロナ禍で一時中断も4年ぶりに復活
「電車で市商祭へGO!」が最初に行われた2017年度は、来場者数が前年度の約3000人から1.5倍の約4500人に増えた。学校祭でのジュースやおにぎりなど物販売上高は、前年度の約350万円から約570万円に増加した。このうち、電車での来場者は延べ約950人で学校側の運賃負担額は約19万円となったが、その分を差し引いても、約120万円の利益が残り、前年度の約100万円から20万円程度増加した。この結果、学校側が来場者の路面電車の運賃を負担しても、その金額を上回るほどの増収効果があることが明らかとなった。そして、翌2018年度以降も取り組みを継続することになり、2019年度まで学校祭来場者は4500人前後を維持することになる。
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