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倒産急増「日本のパン屋」が抱える特殊な問題 消費者にとっては嬉しいが、店にとっては負担

東洋経済オンライン / 2024年4月9日 11時30分

しかし、日本では菓子パン・総菜パンの人気が非常に高く、特に町のパン屋では数十、100といったバラエティを誇る店が多い。セルフサービスの店では、レジ待ちの行列に、トレイいっぱいに菓子パン・総菜パンを並べている人をよく見かける。

菓子パン・総菜パンの人気の高さは、総務省の家計調査からわかる。2人以上世帯における2023年のパン消費金額は、1位が神戸市で4万1183円だったが、そのうち食パンは1万3468円、と約3分の1に過ぎない。朝食にパンを選ぶ、ハード系パンを好む人が多いなどパン好きで知られる神戸市民ですら、菓子パン・総菜パンにより多くのお金を使っている。

食パンなどの食事パンは、2~3日食べられるものが多いし、冷凍保存すれば何日も持つ。しかし、菓子パン・総菜パンは中の具材によって冷凍に向かないものも多く、基本的にその日に食べ切る必要があるものがほとんどだ。食事パンはラスクにする店もあるが、売れ残った菓子パン・総菜パンは捨てざるを得ない。

また、菓子パン・総菜パンは製造にも、より手間やコストがかかる。具材製造を専業メーカーに外注するパン屋もあるし、地元の飲食店とコラボして人気店のカレーを入れたカレーパンにするなどと、あえて外注を売りにする店もある。一方で、店内での「手作り」を売りにするパン屋もある。こちらは、具材作りの負担も大きい。

本来、パン屋はパン生地の質が売りになるはずだが、菓子パン・総菜パンについては具が目当てで、パン生地の味を気にしない客もいるのではないか。それは、誇るべきパンの味が二の次になってしまうことにつながり、本来伸ばすべき技術を伸ばせずにいるパン屋もありそうだ。本来の仕事でないはずの、菓子パン・総菜パンの開発と製造の負担が大き過ぎ、パン屋を苦しめているようにも見える。

15年にしてパンブームの収束の気配

パンブームが始まって約15年。そろそろブーム自体が収束している可能性も高い。実際、高級食パンブームの火付け役の1つ、「乃が美」のフランチャイズ店が2023年末時点で、最盛期の半分以下になるなど、チェーン店でも閉店が目立つ。

高級パンのブームは2013年に始まったが、急速に広がり異業種からの参入も多かったせいか、必ずしも質が高いとは言えないという声もある。多くなり過ぎたこともあり、10年も経てば飽きられても不思議はない。

また、小麦価格が上昇したここ1~2年はコメ回帰現象も目立つ。ハンバーグ専門店などご飯のおいしさを前に出す定食屋が増え、おにぎりブームも加速し、パンではなくご飯を使った食べ物を選ぶ人も多いのではないか。

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