TSMCが日本の補助金よりも欲した"2つの取引先" 台湾企業の失敗からラピダスが学ぶべきこと
東洋経済オンライン / 2024年4月11日 7時0分
今、日本は半導体特需で沸きに沸いている。この熱狂の中心にいるのが半導体受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、TSMCだ。2月に完工したTSMCの熊本工場は、日本の半導体産業と株式市場にとって大きな活性剤となっている。
この巨大企業を創業期から取材してきた台湾のハイテクジャーナリスト、林宏文氏が『TSMC 世界を動かすヒミツ」(CCCメディアハウス)』を日本で上梓。世界の半導体企業の興亡史をつぶさに見てきた林氏が、日本の半導体戦略に直言する。
TSMC熊本工場は「トヨタとアップルのため」
――2月にTSMCの熊本工場が完成しましたが、TSMCにとって日本で工場を建設する意義や目的はどこにあったのでしょうか。
【画像】台湾メディアで活躍し、TSMCを知り尽くすジャーナリストの林氏
日本に投資する理由については、TSMCのシーシー・ウェイCEOが過去に明確に述べています。すなわち「重要な顧客企業のため」なのだと。日本政府に請われたから、補助金が得られたからではないのだと、そうはっきり語っています。
重要な顧客の1つは、トヨタ自動車です。ウェイCEOは熊本工場の開所式にトヨタの豊田章男会長と面談した際、「(熊本工場は)TSMCが日本で半導体製造に乗り出す第一歩。ぜひトヨタの支援をいただきたい」「(自動車向け半導体が)今はTSMCにおいて小さな割合であっても、将来は伸びる。トヨタと一緒に成長したい」と語っています。
もう1つの重要な顧客は、アップルです。iPhoneはカメラ用の撮像素子(CMOSセンサー)を大量に消費しますが、それを供給しているのはソニーグループです。熊本工場が稼働すればソニーのCMOSセンサーの生産能力も上がり、結果としてアップルに貢献できます。
――アップルを筆頭に、TSMCの重要な顧客の多くはアメリカのハイテク企業です。重要市場であるアメリカに工場を作るのは理にかないますが、日本には作らないだろうと半導体関係者の多くは思っていました。TSMCは日本を重視するようになっているのでしょうか。
TSMCがアメリカをより重視してきたのは当然のことです。しかしその姿勢に、変化が生じているのではないかと私は感じています。
TSMCの経営陣は当初、アメリカのアリゾナ新工場のプロジェクトを「千載一遇の成長機会」と感じたはず。中国との半導体戦争という環境の中で、アメリカ政府はTSMCの新工場建設に巨額の公的支援を約束しましたからね。
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