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「人に迷惑をかけない」が行きすぎる社会への懸念 坂東眞理子さんが語る「孤立」と「自立」との違い

東洋経済オンライン / 2024年4月12日 17時0分

最近、とみに語られる「自己責任」という言葉が、これを象徴しています。どんなに困っても人に助けを求めると迷惑をかけることになる、とされるのはつらいものです。

「自立」といえば立派に聞こえますが、困ったときに誰からも手をさしのべてもらえない個人は「自立」しているのではなく「孤立」しているのではないでしょうか。

私は長い間、これからの日本女性は親や夫に保護され、相手の意向に従って生きるのではなく、自立して生きる経済力と精神力を持たなければならないと考えてきました。

しかし、「自立」だけを目指しすぎると、かえって孤立を生んでしまうのではと、内心、危惧しています。

孤立と自立は、どこが違うのでしょうか。

経済的に他人に依存せず、自分で収入を得て生活ができる、精神的には自分でいろいろな問題を引き受け、選択し、判断するというのが自立です。

しかし、ふだんは自立して生活していても、ときにはいろいろな困難や障害に直面して、自分だけでは判断できない、解決できない場合もあります。そんな困ったときに相談できる人、助けを求めることができる人がいるかどうか、助けてくれる組織があるかどうか、それが孤立かどうかを見分けるポイントではないかと思います。

人に迷惑をかけているのは、みんな同じ

日本人がこれほどまでに「人に迷惑をかけてはいけない」という意識を強くした理由のひとつは、江戸時代の農村の「五人組制度」にあるという指摘があります。

これは、隣近所の五世帯が連帯責任を持って年貢を納めたり、共同作業に参加したりするように強制された制度です。1人でも責任を果たさないと全員が罰せられます。

その意識が現代人にも残っていて、日本人は子どものころから「迷惑をかけてはいけない」というルールとマナーをしっかり教えられます。

「ごみを散らかしたら人に迷惑をかけるでしょ」「人と同じ速度で歩かないと迷惑でしょ」「自分のために先生に世話をかけると、ほかのみんなに迷惑でしょ」と、いろいろな場面で注意されます。みんなと同じ行動を取って迷惑をかけないように強制されるのです。

特に職場では、こうした秩序を乱す行動は許されていません。遅刻はチームに迷惑をかける、マニュアルに従わず不良品を出したら大事件、不祥事を起こしたら社長以下謝罪し、ブランドイメージが傷つく……。

学校でも在校生が事件を起こしたりすると、(被害者になっても)学校の責任とされ、社会におわびしなければなりません。

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