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「3重」障害抱える女性、働くための人知れぬ努力 活躍に必要な企業側の「合理的配慮」とは

東洋経済オンライン / 2024年4月13日 8時0分

発達障害への対処法もわかってきた。任された案件をうまくスケジューリングして早めの取り組みを心掛けるように。提出期日の前日までに書類を完成させ、必ず2回は見直すことでミスは確実に減った。

スピードを追求するため、特技の速読術をさらに磨いた。休日はITスキルやマネジメントの本を読んで新たな知識を学んだ。コミュニケーションの面でも、相手の立場を考え、伝わりやすい言葉を投げかけるようになった。

東京五輪の組織委員会でも活躍

自信を得た筒井さんは、「国際的な舞台で活躍したい」という幼少期からの希望を叶えるため、東京オリンピックの組織委員会に応募。契約社員として採用され、上京して1人暮らしを始めた。組織委の内外に出す文書の英訳と和訳を務め、「夢のような時間を過ごせた」と充実した日々を振り返る。

五輪閉会後も東京に残り、次はIT企業の非正規雇用で働いた。だが、体調を崩して入院し、統合失調症を発症したこともあり、2023年12月末で退職。今も定期的な通院を欠かさず、薬を服用して症状を抑え、別の民間企業で翻訳業務に従事している。

待遇はまたしても契約社員で、現在の目標は安定した正社員の職に就くことだ。障害者雇用枠での募集は少なく、競争が激しい。軽度の身体障害者が企業間で取り合いとなる一方、筒井さんのように重い障害や精神的な疾患を持つ人は敬遠されやすいという現実もある。

心身に「3重」の障害を抱えながら、努力を怠らなかった筒井さん。やりがいを持って働けた職場では、周囲の理解や配慮があったことも大きかった。「障害者雇用促進法」は、障害がある労働者が能力を発揮するために、支障を取り除いたりするための措置を「合理的配慮」と定め、2016年から雇用する事業者側に提供を義務づけている。

とはいえ、どのように配慮すればいいか、わからないという企業も少なくない。ヒントを求めて記者が訪れたのが、FA(ファクトリー・オートメーション)機器大手・オムロンの特例子会社「オムロン京都太陽」(京都市)だ。

特例子会社は障害者の雇用に特化した子会社で、一定の要件を満たせば、そこでの雇用人数を親会社のものとしてカウントできる。職に就ける障害者の増加を後押ししてきた一方、通常業務から隔離しているとの批判もある。

一方、オムロンは法令雇用率の達成が義務化される以前から、50年以上にわたって障害者雇用に取り組んできたパイオニアだ。それだけに、京都太陽では障害者が働くためのさまざまな合理的配慮を見ることができた。

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