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「3重」障害抱える女性、働くための人知れぬ努力 活躍に必要な企業側の「合理的配慮」とは

東洋経済オンライン / 2024年4月13日 8時0分

特例子会社という甘えは許されない

体温計や血圧計で有名なオムロンだが、実は工場で使用されるセンサーなどが主力製品だ。京都太陽は全従業員約60人のうち、およそ35人が障害者。提携する社会福祉法人からも約80人の障害者を受け入れ、オムロン本体から受注したソケットや電源などの少量多品種生産に取り組む。扱っている製品は約1500種類に上る。

「ここで作った物はオムロンの看板で世界中に出荷される。当然、高品質と収益性を求められる。『特例子会社だから』という甘えは許されない」。京都太陽の三輪建夫社長(取材当時、2024年3月に退任)はそう強調する。

生産ラインでは、作業効率を高めるための工夫がこれでもかと施されている。例えば、複数の部品をピッキングするブース。指示書に印刷されたバーコードを読み込むと、必要な部品の棚に備えられたライトが光る。取り出すとセンサーが反応し、次に袋へ詰めるべき部品の棚が点灯する。ライトを追っていけば、いつの間にか作業は完了。部品の組み合わせを覚えられなかったり、指示書の文字を読めなかったりする知的障害者でも簡単に働ける。

こうした環境整備の根源にあるのは、「業務ありき」の発想だ。

障害者雇用の現場では、採用した障害者ができそうな仕事をどうにか探し出して与える、という流れになりがちだが、京都太陽は違う。最初にやるべき業務を設定するのだ。そのうえで、個人の障害特性を可視化し、仕事の内容とすり合わせ、遂行のハードルとなるものを取り除く、という過程を辿っている。

頼みたい仕事がある場合、身体障害者には一度やらせてみて、何が妨げになるのかを明確にする。知的障害者には作業内容を丁寧に説明して、理解されなかった点を整理していく。

カギとなるのは各生産ラインに配置したリーダー社員だ。各々の障害特性に合わせ、機械の操作性を最適化するためのアイデアを考案。技術員と相談しながら、社内に設けた工作室で必要な補助具を自作する。これまでに製作した数は約250に及ぶ。ちなみにこのリーダー社員は、障害の有無にかかわらず、意欲や能力を重視して任用される。

双方向のコミュニケーションを深める

発達障害を含む精神障害者は、知能や運動機能は健常者と変わらない。仕事自体は問題なくこなせるが、コミュニケーションで苦労するケースが多いという。そうした障害の場合は「どちらかというと、業務より同僚とのマッチングが必要」(三輪氏)。

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