BM事件で信頼失墜「中古車業界」は変われるか インセンティブ廃止、総額表示など改革の動き
東洋経済オンライン / 2024年4月13日 8時0分
ヘッドライトのカバーを割る、ドライバーで車体を引っ掻いて傷を付ける、ゴルフボールを靴下に入れて振り回し車体を叩く――。これらは中古車販売大手ビッグモーターが行っていた、“車体損傷作出”の例だ。
【写真】不正を起きにくくするために、ネクステージは営業要員のインセンティブを廃止した。
ビッグモーターが事故車修理における保険金を不正請求していた問題が大炎上したのは、昨年夏のこと。特別調査委員会による調査報告書の内容が世に出ると、一気に批判報道が過熱した。7月25日の謝罪会見で、兼重宏行社長(当時)が「ゴルフを愛する人への冒涜です」といった発言をしたことも火に油を注いだ。
さらに疑いの目は中古車業界全体にも向けられた。ある業界関係者は「問題を起こしたのが業界最大手だったので、業界全体が悪だと言われてしまっている」と嘆く。だが、メディアの取材や社内調査によって、他の企業でも不適切な事案があることが明らかになった。
例えば、東証グロース市場に上場する中堅のグッドスピードでも、2023年8月下旬に保険金の過大請求疑惑が浮上、社内調査委員会の調査によって複数の不適切事案が判明している。同社では今年1月初旬に、2019年4月の新規上場以前から不正会計を行っていたことも明らかになった。売上の先行計上は、2017年10月からの約6年間で5000件超に及んだ。
大手の一角、ネクステージも9月に文春砲を浴びた。文春からの質問状に回答する形で、過去に保険契約の捏造などがあったことを開示したうえで「適切な対応を行ってきた」と反論した。
もともとトラブルが多い市場
中古車業界は消費者とのトラブルが多い。全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)に登録された「中古自動車」に関する相談件数は、2019年度から2022年度まで、毎年7000件超。2023年度はビッグモーター問題もあってか8500件を超えるなど、毎年一定程度の相談がある。
「もともと中古車の買い取り・販売では、何度も執拗に電話をかけるなどの強引な接客があった。嫌な思いをしたり、そうした行為を見聞きしたりした消費者から、あまりよいイメージを持たれていなかった」(大手中古車事業者関係者)。
ただし、こうしたイメージ悪化の実ビジネスへの悪影響は、少なくとも現時点では見られない。
2023年度の中古車登録台数(登録車+軽自動車)は前年度比2.5%増の645万1230台。5年ぶりにプラスとなった。コロナ禍や半導体不足によって落ち込んでいた自動車生産が回復傾向となり新車販売が増加、つれて中古車市場も活気が戻っている。
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