脳出血で倒れた30代男性、自ら死を願った驚愕理由 「長生きしたら不幸」と思えてしまう日本の問題点
東洋経済オンライン / 2024年4月14日 13時0分
ひどいやつだと思わないで聞いてほしい。当時、うちには3人の子どもがおり、収入がほとんどなかった母と叔母への仕送りも必要だった。
「2人はいつまで生きるのだろう」
慶應の教授といえば、世間的には羽振りのいい暮らしを想像されるだろう。だが、うちは片稼ぎ。現実には、回転寿司で子どもが何を頼むのかハラハラするし、服だって安いファストファッションに頼っている。
そんな生活にさらに施設費用が加わるのか……「ニヤッ」と笑った母を見た瞬間、「2人はいつまで生きるのだろう」と思った。同時に、姉夫婦は、この笑顔を毎日のように見ている。私は自分の弱さ、不誠実さを知り、悶絶した。
だが、この母への冷たい目線は、かつて自分自身に突き刺さったトゲでもあった。
今から13年前の2011年4月、東日本大震災が起きた翌月に、38歳だった私は脳内出血で死にかけた。過労で倒れ、床に強く頭を打ちつけたのだ。
生きるか、死ぬか、後遺症が残るか、残らないかの瀬戸際に立たされた私は、ベッドで布団をかぶって一晩中泣いていた。
死ぬのが怖くて泣いたのではない。まるで反対だ。頼むから殺してほしい、そう思って泣いたのだ。
死を願うなんて、みなさんには想像できないかもしれない。でも、もし、このまま運よく死ねれば、多額の保険金がおりる。教育費も生活費も心配なくなるし、住宅ローンもチャラになる。仕送りも何とか続けられる。家族みんなが安心して生きていける。
反対に、運悪く生き延びて、元の体に戻れなかったとすればどうだろう。保険金もおりず、仕事もできず、給料ももらえず、住宅ローンは払えず、教育も、暮らしも、仕送りも、全部あきらめるしかなくなるはずだ。
みなさんは、以上の私の経験をどう聞かれただろう。
自分が生き延びたら、愛する人が生き延びたら、「よかったね、幸せだね」と言えるのが当たり前の世の中ではないだろうか。
ところが、命懸けで私を育ててくれた母や叔母が長生きするとしんどくなる。子どもたちのために自分なんて死んだほうがマシだ、と考える。こんな社会はまともじゃない。絶対に許される社会じゃない。
私の話が悲しいとすれば、親の不幸を願ったり、自分の死を願ったりする「非人間的な感情」に理由がある。そして、私のなかの非人間性は、おそらく多くの人たちにとっても他人事ではない。だから私は、「この国には悲惨があふれかえっている」と言う。
あまりにも重くのしかかる「生活コスト」
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