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脳出血で倒れた30代男性、自ら死を願った驚愕理由 「長生きしたら不幸」と思えてしまう日本の問題点

東洋経済オンライン / 2024年4月14日 13時0分

人間性を喪失する理由はどこにあるのか。そう、それは、医療、介護、教育といった「生活コスト」があまりにも私たちの肩に重くのしかかってくるからだ。

ご存じだろうか。いま、先進国の社会保障に大変動が起きている。かつて、最も手厚い福祉で知られたのはスウェーデンだった。ところが、同国では、社会保障が抑制され、反対に社会保障の充実を図る「自己責任大国アメリカ」とあまり変わらない水準にまできている。

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反対に高福祉高負担の代表国はフランスだ。同国では、年中、政府を相手に国民が暴動を起こしている。彼らは、国に対して抗議の声をあげ、同時に、税を納め、暮らしを支え合い、連帯を追い求める。政府はそんな国民を恐れている。

いまの日本は、主要先進国の中で最も社会保障が貧弱な国の1つになりかけている。国は、政治家は、国民を恐れていない。事態は改善されず、安心して生きていけない社会の歪みが、愛する人の死を願う社会へと私たちを誘う。本当にこのままでいいのだろうか。

いまのわが家は、子どもの数がさらに1人増え、4人になった。だけど、以前のような不安はない。なぜなら……母と叔母が火事で死んだからだ。私は、2人の命と引き換えに、生活の安定を得ることになった。

最後まで私の幸福を願っていた母と叔母

2人が亡くなってすぐ、みんなで食事に行った、あの日の風景を夢に見た。

母はやはり私の声に応じようとはしなかった。でも、丁寧に食事を済ませたあと、私の胸の向こう、私の心のずっとずっと向こうのほうを眺めながら、「ニコッ」と微笑んだ。それは、邪気のない、天使のような、かわいらしい笑顔だった。

「なんね、お母さん、子どものごたる顔(子どものような顔)で笑って。かわいかねー」

なぜあのとき、そう言ってあげられなかったのだろう。母と叔母は、最後の最後まで、私の幸福を願い、そして迷惑をかけまいと死んでいった。目が覚めたとき、私の頬は涙で濡れていた。

井手 英策:慶應義塾大学経済学部教授

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