1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

700円で美味しい「インネパ」背後にある壮絶な貧困 日本に出稼ぎに来た人々追った『カレー移民の謎』

東洋経済オンライン / 2024年4月14日 12時30分

また、こうしてはまったパブで、女性に騙されたり、逃げられたり、そんな「やらかし」エピソードも、室橋さんはたくさん聞いてきた。

「頑張って日本で働いて、やっとの思いで国に帰ってきたら、置いてきた妻が他の男と結婚していて、家族のために建てた家が自分のものでなくなってしまった、なんてエピソードもありましたね」

新大久保という場所で「人間」として外国人に接する

室橋さんは現在、新大久保を拠点に活動をしている。新大久保は、さまざまな国籍の人が暮らし、店を出している。リアルな外国人の生活に室橋さんは触れてきた。だからこそ、生身のインネパの姿を聞き出せているのかもしれない。室橋さんは外国の人へのインタビューについてこう述べる。

「外国人は、かなりフレンドリーな人が多いです。日本人を取材するよりやりやすいというか、気楽ですね」

また、こうしてさまざまな人に話を聞く中で、別の移民の人を紹介してもらえる機会も増えた。

「やっぱり人の紹介の力は、日本社会よりも強いんですよ。特に外国で商売してる人たちはみんなそうです。昔から日本で同じように商売をしている友達同士とか、そういう人が言うならいいよ、みたいな。早い段階で日本にやってきたネパールの人の中には、色々なことがあったからでしょうが、昔のことを話したがらない人も多い。でも、そういう人も話をしてくれたのも、やはり人の紹介の力だったと思います」

さまざまな外国人の人の話を聞く中で、室橋さんはこう主張する。

「一方ではネパールの厳しい現状の中で、重症の家族のために身を粉にして働いている。でも、もう一方では、お酒を飲んでベロベロになっている。ネパールの人たちも、良いところと、悪いところのある、『人間』だと深く思いました」

移民を「人間」として見る目線こそが大事だ

室橋さんは、この、外国人の移民を一人の「人間」として見る目線が大事ではないかという。

「当然のことですが、彼らも働くときは働くし、さぼるときはさぼる、人間なんです。そういう、良い面と悪い面の両方がある。

日本での外国人に対する見方は二極化していると思います。すごく危険な犯罪者だから全員出て行くべきだ、という意見がある一方、とてもかわいそうで保護すべき弱者なんだ、という意見もある。この、どちらかだけになってしまっています。

でも、この2つはどちらとも、外国人を「人間」扱いしてないですよね。かたや「危険なモンスター」だし、かたや「捨てられたかわいそうなペット」のような存在として外国人を見ている状況です。外国人を「人間」として見たり、描いたりすることが必要だと思います」

たしかに『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』には、室橋さんがリアルなネパールの人々と交流する中で見えてきた、彼らの良い面と、悪い面が刻み込まれている。当然のことながら、インネパと一口にいっても、その内実は多様で、簡単に書き切れるわけではない。

清濁併せ呑んだ、室橋さんの視点が、インネパの実情を浮かび上がらせているのかもしれない。

谷頭 和希:チェーンストア研究家・ライター

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください