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「歳をとれば脳の働きは弱まる」と思う人の大誤解 新しい情報を入れれば一生に渡り変化し続ける

東洋経済オンライン / 2024年4月15日 14時0分

この発見は、すばらしいものだと思います。脳がこのように変化することは、「神経可塑性」と呼ばれます。生物は、生きている限り新しい状況に対応して変化し続けるのですが、生物学ではこの性質を、「可塑性」と呼んでいます。脳はこのような変化が得意だということになるわけです。

脳の能力は向上し続ける

グリーン氏の記事によると、人間が生まれたときの脳細胞(ニューロン)には、2500本のシナプス(神経細胞同士が連絡する接点)があります。接続の数は、その後増えていって、3歳になると、約6倍、つまり、約1万5000本になります。

しかし、ここがピークで、その後は、シナプスの数は減っていくのです。このような過程を、「シナプス剪定」と呼んでいます。

シナプスの数だけからすると、人間の脳の能力は、3歳のときに一番高くなり、その後は、下がっていくように思えます。

しかし、実はそうではなく、シナプスの数が減るのは、必要なくなったシナプスを減らしていくことなのだそうです。ですから、脳の能力は、この後も向上し続けることになります。

実際、人間は、その後、さまざまなことを学び、またさまざまな新しいスキルを身につけます。そして、ニューロンも成長していきます。

ここで重要なのは、脳の細胞が情報を保存している期間によって、ニューロンの接続が変わるということです。短期記憶で情報を保存する場合には、すでに存在しているシナプスの構造が変化して、樹状突起が強くなったり、増えたりします。つまり、新しい接続を作らずに、すでに存在している接続を強めるのです。

それに対して、勉強して得た知識など重要な情報の場合には、その情報を応用するたびに、長い期間にわたってニューロンが新しい接続を作るのです。これによって、情報を長期的に保存し、一生使えるようにできます。これが、長期記憶です。

以上で紹介したグリーン氏の見解は、高齢者の勉強を激励する大変力強いメッセージです。

加齢と知能の関係については、多くの研究がなされるようになってきました。そして、数々の発見がなされています。例えば、知能について、次の2つの脳を区別するという考えが、ホーンとキャッテルという2人の学者によって提唱されました(西田裕紀子「高齢期における知能の加齢変化」健康長寿ネット、長寿科学振興財団、2019年2月1日)。

2つの区別とは、「結晶性知能」と、「流動性知能」との区別です。

結晶性知能とは、個人の長期間にわたる経験や、教育や学習を通じて獲得した知能です。これは、言語能力や、理解力、あるいは洞察力に関連しています。それに対して、流動性知能とは、新しい情報を獲得し、それを処理して操作していく能力です。

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