小泉今日子×福岡伸一「"アイドル"と動的平衡」 どんどん壊して、新しくつくり変えていく
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 14時0分
「生命とは何か」という根源的な問いに向き合い続けている生物学者・福岡伸一さんと、歌手・俳優であり、演劇のプロデューサーとしても活躍する小泉今日子さんが対談。
小泉さんの「アイドルのイメージから自由になったら世界が広がった」という話と、“福岡ハカセ”が唱える生命理論「動的平衡」がハーモニーを奏でるように混じり合っていく様子をお楽しみください(本記事は、福岡伸一さんの著書『新版 動的平衡ダイアローグ: 9人の先駆者と織りなす「知の対話集」』から一部を抜粋、再編集したものです)。
人間の体は蚊柱のようなもの
小泉 以前にも一度対談したことがありますよね。
福岡 ええ。あの対談は『エッジエフェクト(界面作用) 福岡伸一対談集』(朝日新聞出版)という本に収録されましたね。
小泉 あっ、『エッジエフェクト』、そうだ、そうだ。そのときに人間は蚊柱みたいだというお話が出て、それは納得がいくというお話をしたんですよね。
福岡 そうです。人間の体はかちっとした個体みたいに思われているけれど、じつはたえまなく入れ替わっているんです。蚊柱のようなものです。蚊柱は柱みたいに見えますが、柱ではない。出ていく蚊がいれば入ってくる蚊もいて常に入れ替わっているんですね。
人間の体もじつは環境から絶えずエネルギーが流れ込んできて、やがてまたそれがどんどん環境に戻っていくということを繰り返しています。
消化器の上皮細胞などはすごい速度で入れ替わっていて、2、3日で新しい細胞と古い細胞が入れ替わります。ウンチの主成分の一つはそういった古い細胞で、じつは自分自身(笑)。
小泉 そうか。そういうお話だったので、それはすごいなと。私はいつも自分自身に辻褄が合ってないと思ってたんですよ。
福岡 一貫性がないという意味ですか。
小泉 はい。昨日は「明日、ここに行こう」と思っていたけれど、今日起きたら「私、行きたくない」みたいに感じることがあって……。みんなはどうして行けるんだろうと思ってたんですよね。
なので福岡先生に「毎日、違う自分だ」っていわれて、「そうか、それはすごく生きやすくなるぞ」と思ったんです(笑)。
福岡 そうなんですよ。だから、昨日の私と今日の私では、細胞レベルでは違うし、数カ月たつと、もうかなり違っている。
一年前に私をつくっていた物質は、いま、ほとんど残っていない。骨とか歯みたいにかちっとしているところでも中身がすごい速度で入れ替わっているので別人といっていいわけですね。
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