イラン攻撃→「全面衝突」あるか、たった1つのカギ 「水面下の戦争」から局面一転、直接攻撃の衝撃
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 15時40分
イランは攻撃で大きな被害が出ないことを計算に入れながらも、軍事的な標的に少しは打撃を与えられるかもしれないとの読みもあった。イスラエルやアメリカは「99%」の迎撃に成功したと防空システムの有効性を強調している。
これに対して、テヘラン大学のモハマド・マランディ教授は中東の衛星テレビ局アルジャジーラの番組で、イランの攻撃は「デコイ(おとり用の模造品)兵器」を織り交ぜたもので、弾道ミサイルはイスラエル軍基地に着弾してダメージを与えたと指摘。高額な防空システムに対して安価なドローンを大量投入した攻撃が成功したとの認識を示した。
イランが標的としたイスラエル南部のネバティム空軍基地は、F35ステルス戦闘機が拠点としており、イスラエルがイランの核関連施設を攻撃する場合の重要施設になる。地理的に約1800キロ離れたイスラエルとイランの間で戦争になれば、航空戦力が頼りとなるためだ。
イランは将来的な軍事衝突も想定して標的を選定したことがうかがえ、基地の滑走路や戦闘機を破壊することで敵地攻撃能力を見せつけたい思惑もあったとみられる。
かねて水面下で戦争を繰り広げてきた2カ国
イランはウクライナ戦争でロシアに自爆型ドローンを供給する中で、実戦で技術を磨くとともにロシアと技術協力をしており、航続距離や搭載できる爆発物の重量を拡大。
弾道ミサイルや巡航ミサイル、ドローンを組み合わせて相手の防空網をかいくぐることに成功しているロシアの戦術に類似した作戦を展開し、一定の戦果を上げることを目論んでいた節がある。
イランがイスラエルに対する直接攻撃に踏み切ったのは、在外公館にいた革命防衛隊司令官らを標的としたイスラエルによる空爆が直接的なきっかけとなったが、両国はかねて水面下の戦争を繰り広げてきた。
イランは、イスラエルの関与が疑われる核技術者の暗殺や核関連施設に対する妨害工作でも直接的な反撃は避けてきたが、在外公館への攻撃に対して報復を自制すれば、メンツが保てず、イスラエルに対する抑止力も確保できないと判断した。
イスラエルが在外公館を空爆したのにも経緯がある。昨年10月のハマスによるイスラエル南部への奇襲攻撃を受けたガザ戦争で、イスラエルはイランの支援を受けるイエメンのイスラム教シーア派系フーシ派や、レバノンのシーア派組織ヒズボラからの攻撃にもさらされてきた。ミサイルやロケット弾による散発的な攻撃にとどまっているものの、イスラエルはイランが背後で画策しているとしていら立ちを強めていた。
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