イラン攻撃→「全面衝突」あるか、たった1つのカギ 「水面下の戦争」から局面一転、直接攻撃の衝撃
東洋経済オンライン / 2024年4月15日 15時40分
イランによるイスラエル攻撃に先立つ13日には、革命防衛隊がホルムズ海峡付近でイスラエルに関係のある船舶を拿捕した。過去にもイランに近いオマーン湾やペルシャ湾などでイランの関与が疑われる船舶への攻撃が相次いだこともある。今後、イスラエルとイランの戦いは、より直接的な形を取り、全面戦争へのリスクが飛躍的に増大したと言えよう。
ポイントはイスラエルが報復措置に出るか
今回の局面で焦点となるのが、領内攻撃を受けてイスラエルが報復措置に出るかどうかだ。
3月には、ガザ地区に対する食糧支援活動を行っていたアメリカの慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の車両が空爆を受け、WCKのスタッフである英豪などの外国人7人が死亡した。
ガザ当局の集計で3万3000人以上が死亡したイスラエルのガザ攻撃で、民間人の犠牲者の多さを批判してきたアメリカだが、強固な同盟関係を背景にイスラエルへの弾薬供与などの軍事協力を続け、国際的な批判を浴びてきた。
WCKスタッフの死亡を受けてアメリカのバイデン政権のイスラエルに対する言辞は、表現だけ見れば厳しさがうかがえるようになっている。イスラエル軍は重大なミスがあったとして将校2人を解任、ガザ地区南部のハンユニスから地上部隊を撤退させるなど国際社会の声に耳を傾けてこなかったイスラエルは批判を交わそうとする動きも見せている。
自制を求める声を無視し続けるイスラエルに対し、バイデン政権は批判のトーンを強めており、大統領は民間人保護を徹底しなければ、軍事支援を見直すと警告している。
今回、ジョー・バイデン大統領はイスラエルのイランに対する報復攻撃を支持しない意向を伝えており、イスラエルがアメリカの要請に耳を傾けるかがカギとなる。
報復ならドローン生産拠点か
イスラエル側にも事態を悪化させたくない事情がある。ガザ戦争で予備役を招集するなどイスラエル社会には大きな負担が掛かっており、弾薬も十分な量が確保できていない。
昨年10月の奇襲攻撃でハマスは短時間に数千発のロケット弾を発射するという「飽和攻撃」を行い、防空システムの能力限界を超えることでイスラエルに甚大な被害を与えられることを証明した。
イランのドローンの優位性は、安価で大量生産可能という点にあり、イスラエルは迎撃するために高価なシステムを運用しなければならない。さらに飽和攻撃が実施されれば、飛来する多数のドローンや弾道ミサイルをさばき切れないことは確実で、今回のイランの攻撃は将来的な軍事衝突を視野に、双方にとって貴重な軍事情報の蓄積が可能になった。鉄壁の守りを誇るイスラエル軍基地への攻撃に成功したことで、イランは一定の手応えを感じているだろう。
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