国策ラピダス「補助金1兆円」注ぐ至難技術の成算 535億円投じる「後工程」でブチ上げた開発戦略
東洋経済オンライン / 2024年4月16日 7時0分
次世代の最先端半導体の国産化を目指すラピダスは4月4日、経済産業省から新たに最大5900億円の追加支援を受けることを発表した。これまでの支援額は累計で9200億円に上る。
【画像】ニッポン半導体の黄金期を知る、国策ラピダスの小池淳義社長
金額の規模もさることながら、今回注目すべきは、初めて「後工程」の開発方針が明らかになったことだ。5365億円は現在北海道に建設中の千歳工場への「前工程」の設備導入やクリーンルーム建設に使われる一方で、535億円が後工程分野に投じられる。
半導体の一連の製造プロセスのうち、基板となるシリコンウェハーに回路を描く前半パートを「前工程」、そこでできあがったウェハーを切り分けて製品として仕上げる工程が「後工程」と呼ばれる。
ラピダスが前工程で狙う最先端の「2ナノ」半導体の量産はこれまでにも業界内からその難しさが指摘されてきた一方で、後工程戦略については「情報がほとんどないので評価のしようがない」という評価を受けてきた。だが今回の発表からわかったのは、前工程だけでなく後工程でも量産までの道のりが非常に険しいことだった。
後工程技術のキモ
同社のビジネスにとって、後工程の重要性は非常に高い。というのも、ラピダスが受注獲得を狙うAI向けなどの半導体にとって、後工程の技術がその性能進化のカギを握る必須技術だからだ。
ラピダスが掲げるビジネスモデルは、顧客の半導体メーカーから委託を受けて受託製造に特化するファウンドリーモデル。この業界では、台湾のTSMCが世界シェアの6割超を握る技術・規模ともに圧倒的な存在だ。
新規参入となるラピダスは設立当時から「スピード重視」という戦略を強調してきた。短期間での製造を売りにすることで、AI半導体を中心に技術進化が早いメーカーからの委託を獲得しようという戦略だ。
そこで打ち出したのが、一般的には別々の企業や工場で分業して行われる前工程と後工程を同じ製造ラインで一貫して行い、製造スピードを上げるという手法だった。
ラピダスの小池淳義社長は前工程の製造プロセスに長く携わってきた元エンジニアなだけに、これまでも前工程の方針については具体的に語ってきた。一方、後工程はこれまで方針が示されていなかった。
AI向けをはじめとした高性能半導体では、1枚のチップにすべての機能を詰め込むことは少なく、高性能化は前工程だけでは完結しない。機能ごとにチップを分けて製造し、それら複数のチップをあたかも1枚のチップかのように後工程でつなぎ合わせて造られるものが大半だ。
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