イスラエルが「大規模な報復」をしにくい理由 中東情勢について専門家2人緊急インタビュー
東洋経済オンライン / 2024年4月17日 14時20分
4月14日、イランが自国の大使館が空爆された報復として、イスラエルに向けてドローン(無人機)とミサイルによる攻撃を行った。イスラエルが大規模な報復をする可能性はあるか。ガザで続く戦闘や、アメリカとの関係も含め、今後の中東情勢について、防衛大学校名誉教授の立山良司氏と、慶応義塾大学法学部の錦田愛子氏にインタビューを行った(インタビューはオンラインで個別に実施)。
イスラエルの抑止力が効かなかった
――4月14日のイランによる攻撃を、どのように見ましたか。
立山良司(以下、立山) イスラエルはイラン本国からミサイル、無人機で300発以上の攻撃を受けた。ほとんど撃墜したとはいえ、イランに対する抑止が効かなかったということになる。イスラエルは目下、抑止力の再構築を課題と捉えているだろう。
だが、報復のために大規模な攻撃で報復をする可能性は低いのではないか。
――なぜでしょうか。
立山 まず現在イスラエルは、パレスチナ・ガザ地区での戦闘で戦力が手一杯という状況だ。即座に大規模な報復を行うほどの余裕はないだろう。
イスラエルには圧倒的な軍事力をイメージする人が多いが、実はそうではない。兵役義務のあるユダヤ人口は700万人強にすぎず、何年の間も兵士を動員して戦い続けられるような国ではない。これ以上手を広げるのは難しいだろう。
また、今回イランのミサイルや無人機のほとんどが撃墜されたが、イスラエルだけではなくアメリカや英国、フランスやヨルダンもこの撃墜作戦に参加していたということが明らかになった。イスラエルを含めて多国間の共同防空システムが初めて実戦で機能した意味は大きい。
イスラエルにとってイランは最短でも1000キロメートル以上も離れた国だ。この多国間防空システムが機能している限り、イランの空からの脅威はそれほど大きくないと言えるだろう。近隣も巻き込むような大規模な報復を行えば、こうした地域の防空システムを失う恐れもある。それは行わないのではないか。
――イラン本国以外にも、親イラン勢力という脅威があります。
錦田愛子(以下、錦田) イランから支援を受けるレバノンのヒズボラとイスラエルは、ガザでの戦闘後、断続的に戦闘を続けている。まだ本格的なものではないが、今後拡大の可能性がある。
イスラエルとヒズボラとの間では、2006年に大規模な戦闘が起こり、ヒズボラのロケット弾はイスラエル北部のハイファにまで届いている。それだけの兵力があるということで、イスラエルには脅威となる。だが、お互いに地上軍の侵攻にまでは発展しないのではないか。
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