イスラエルが「大規模な報復」をしにくい理由 中東情勢について専門家2人緊急インタビュー
東洋経済オンライン / 2024年4月17日 14時20分
――イスラエルと、ガザ地区のハマスとの戦いは今後どうなるでしょうか。
錦田 ハマスは、イスラエル軍のガザからの完全撤退や、ガザ北部への避難民への帰還、恒久的な停戦などを要求している。だがこれらの条件はイスラエルにとって受け入れがたく、交渉が難航している。
一方イスラエルでは、いまだに130人以上の人質を解放できておらず、世論の批判が大きい。人質の解放が達成できない限り、戦闘を終えられない状況だ。
イスラエル軍はハマスの拠点の制圧と、戦闘員の殺害をガザ北部から展開してきたが、南部のラファにも侵攻し、ガザ地区全土から脅威を取り除いたと宣言できるようになるまで戦闘を続けるのではないか。
――イスラエルが求める人質の解放とハマスの壊滅は、矛盾するのでは。
立山 地域に溶け込んでいるハマスは軍服を脱げば民間人と変わらず、避難民として暮らしている人もいる。ハマス壊滅は軍事的に不可能だが、ネタニヤフ政権としては掲げてしまった以上引き下がれないのだろう。
もしイスラエルがラファに侵攻すれば、民間人の犠牲は増え、人道危機も深刻化する。アメリカ・バイデン政権は人道危機の深まりに相当いらだっており、与党民主党内にはイスラエルへの兵器供与を制限すべきとの声も上がっている。それだけにバイデン政権との関係はかなり悪化する危険がある。
一方で国際世論も変わりつつある。3月25日には、アメリカが初めてガザでの停戦を求める安保理決議で「反対」ではなく「棄権」を選択した。アメリカが拒否権を使ってでも反対することが難しい状況になっている。
――イスラエルでビジネスを行う企業が気をつけるべきことは。
立山 この10年ほど、イスラエルへ進出する日本企業が増えたが、その前提にあったのはイスラエルが安全な国で、高度な技術を持っているというイメージがあったからだ。しかし決してそうではない。
イスラエルには、パレスチナ問題による地政学リスクがあったにもかかわらず「たいしたことがない」、あるいは「パレスチナ問題などない」という思い込みがあったのではないだろうか。
イランとの関係が悪化し、レバノンのヒズボラからの攻撃も激化すれば、イスラエルの安全はますます脅かされる。イスラエルとの関係拡大を見直す機会になるのではないか。
紅海周辺でのフーシ派による船舶の攻撃リスクは、ガザでの戦闘が続く限りなくならないだろう。
兵頭 輝夏:東洋経済 記者
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
緊迫するイスラエルとヒズボラの影で、イランが狙う「終わりなき消耗戦」と戦争拡大の危険性
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 14時21分
-
イスラエルがハマスと同時にヒズボラにも戦争を仕掛けたがる理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月29日 21時18分
-
イスラエル・ガザ侵攻に次なる展開、ヒズボラとレバノン国境地帯で「全面戦争」が開始か?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月26日 14時28分
-
ガザ激戦「間もなく終了」 イスラエル首相が明言、部隊再編
共同通信 / 2024年6月24日 9時55分
-
イスラエル北部で応酬続く 米、特使派遣と報道
共同通信 / 2024年6月15日 8時40分
ランキング
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)