日本中が熱狂「新NISAブームの今」の不都合な真実 後藤達也×田内学「お金と投資」対談【前編】
東洋経済オンライン / 2024年4月18日 6時59分
いずれにせよ、国民から預金でお金を集めて、日本国内のお金の足りない企業や個人に貸すというのは、ビジネスとしてはどう考えても時代遅れですし、これからもシュリンクするでしょう。
田内氏「円安は日本経済の大きなリスクになる」
――最近の経済トピックスで、気になることはありますか?
田内:僕は為替レートが気になります。
後藤:為替レートもいろいろな論点があると思いますが、田内さんのご関心はどういうところですか?
田内:ここ数年、急激に円安が進みました。こういう状況になると、日本からの輸出が増えてもいいのに、逆に貿易赤字が膨らんでいます。貿易赤字を埋めるほどには増えていません。
一方で、都心部を中心に不動産価格が急騰し、数年前に比較して売り出し価格が倍になっている物件も珍しくなくなっています。
知り合いから聞いた話ですが、「こんな値段で、買う人がいるのかな?」と疑念を持っていた物件に引き合いが10件もあって、内見に案内したらすべてのグループが中国本土か台湾の人だったとのことです。
為替が円安に振れると、海外の人の目には日本の不動産が割安に映るので、どんどん価格が上がってしまいます。不動産業界にとっては喜ばしいことかもしれませんが、日本で暮らしている僕たちにとっては買いにくくなってしまうだけなので、決して喜ばしいことではありません。
後藤:私も日本が新興国に逆戻りして、生活水準を保つのが難しくなるのではないかという懸念は持っています。
田内:そんな状況の中で、新NISAが始まったのですが、新NISAではオールカントリーやS&P500のETFに人気が集まっていると聞きます。
これらの投資は当然、外貨で行われます。外貨で投資する人が増えれば、所得収支が増える。実際に日本は昔から所得収支が多くて、貿易赤字以上の黒字があるおかげで、経常収支はプラスです。所得収支が増えて、貿易赤字とある程度打ち消しあって、経常収支はプラスに保てるかもしれません。
しかし、実際に中身を見ていると、所得収支が多い企業は現地に工場などを持っていたりするからリターンが多くなっているだけなので、そこで得られた利益はなかなか円に戻ってくるものではありません。
また、個人でも外貨で資産を作っている人は富裕層が多く、彼らがドルを買うことによって円安になると物価が上がってしまって、富裕層ではない人たちの生活がより一層苦しくなってしまいます。
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