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市場の「見えざる手」による企業の監視は有効か? 企業はなぜ存在し、社会をどう変えてきたのか

東洋経済オンライン / 2024年4月19日 8時20分

これらの特質を兼ね備えたことで、企業は商業活動を推し進めるとてつもなく強力なエンジンを獲得した。

資本家階級の誕生

実際、これらの特質を併せ持つというのは類例のないことで、18世紀英国の法学者ウィリアム・ブラックストーンは、有名な著書『英法釈義』(Commentaries on the Laws of England)の中でかなりのページをその説明に費やしている。

「企業の特権および免除、地所および財産は、ひとたび企業の所有するところとなれば、以降、新たな後継者にそのつどあらためて譲渡されることなく、いつまでも企業の既得のものであり続ける。なんとなれば、企業の創設から現在に至るまでに在籍した個々の構成員、および将来、在籍する個々の構成員は全員、法律上、一個の人格と見なされるからである。この人格に死というものはない。これはちょうどテムズ川がつねに同じ川でありながら、それを構成する部分は刻々と変化し続けているのと同じである」。

同じく英国の著名な法律家だったサー・エドワード・コークは、もっと簡潔に次のように述べている。企業は「目には見えず、死ぬこともない」。

企業の発展はまったく新しい社会階級の誕生にもつながった。資本家階級の誕生だ。いつの時代にも裕福な人たちはいたが、企業は裕福な人たちにもっと裕福になるための新しい手段を与えた。

富を持つ人はそれをただ蓄えておいたり、贅沢三昧の派手な暮らしに費やしたりする代わりに、企業に投資できるようになったのだ。企業の株主になれば、あとは投資したものが成長するのを高みから見守っていればいい。その成長のために実際に働くのはほかの人間であり、自分ではまったくか、あるいはほとんど何も貢献する必要がない。

これにより企業のあり方は一変した。企業の株式を持つがその経営には携わらない資本家階級が出現したことで、経済の中に、独自の論理と手法を有する新しい勢力が生まれたのだ。

資本家たちが気にかけたのは、たいていは給与や長期的な企業の成功よりも配当や株価のほうだった。このことは必ずしも企業にいい影響を及ぼさなかった。また、新手の詐欺を招くことにもなった。資本家は自分が株を持っている企業の評判を変えることで、株価を操作して、富を増やせたからだ。

例えば、東インド会社の有名な株主だったサー・ジョサイア・チャイルドは、インドで戦争が始まったというデマを流して、その株価を下落させた。そしてまんまと安値で株を大量に買い取ることに成功した。このような市場操作のせいで、株式市場や未熟な投資家の懐は数世紀にわたって損なわれ続けてきた。

「見えざる手」による監視

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